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#115ヴァイオリニスト
大谷康子さん

音楽に形はないけれど
人の心に入る時、大きな力を持つ


 2015年でデビュー40周年! 国内外のオーケストラと共演を続ける世界的ヴァイオリニスト・大谷康子さんは、練馬区在住です。その深くあたたかい音色は、「歌うヴァイオリン」と評されるほど。2016年4月1日には、練馬区文化振興協会の理事長に就任しました。

「理事長という大役を引き受けたのは、『音楽がまちに広がる』という私の夢に、一歩近づけると思ったからです。誰しも様々な思いを抱えて生きていると思いますが、まちの中で音楽に触れることで、心豊かに、和やかになれば、と願っています!」

 一人でも多くの人に、音楽を届けたい…。就任記念の「みどりの風吹くまちに〜トーク&スイーツコンサート」というテーマも、そんな思いから来ています。

「当日はオーナーシェフの鎧塚さんが応援に駆けつけてくれます。会場でスイーツを販売し、ステージ上では私と一緒にトークを展開。スイーツはほとんどの人が好きでしょ。間口を広げて、そこから音楽に興味を持ってくださればいいなと思っています」

 クラシックは難しい…と敬遠する風潮を変えていきたい。その思いも、大谷さんの活動の源泉です。

「難しいことを難しいと思わせるのは、本当の芸術家じゃありません。何も知らなくても『感動した』『鳥肌がたった』と思わせるのが、本物の芸術。スポンジのような柔らかい心で、先入観なく受け入れたら、きっと楽しいと思いますよ!」

 大谷さんは、音楽による社会貢献活動も、大学時代から積極的に行ってきました。「ヴァイオリンを持った伝道師」とも呼ばれています。

「音楽は形がないけれど、人の心に入るとき、大きな力を持ちます。東日本大震災の被災地で演奏した際は、皆さんの表情がみるみる変わるのを見て、音楽は心を元気にするんだ、と改めて思いました」

「また、東日本大震災の時に救援・支援してくださった世界各国の方にお礼がしたくて、2011年9月に国際文化会館で『"ありがとう"を音楽に載せて』コンサートを開催したんです。情勢の難しいなか、様々な国の大使が来てくださいました。外交では簡単にいかないことでも、音楽だからこそできることを実感しました」



3歳からヴァイオリンが好き
夢は「音楽がまちに広がること」


 大谷さんがヴァイオリンを始めたきっかけを伺いました。

「3歳の時、公演を聴いて魅了され、『ヴァイオリンを習いたい』と親に言いました。子どもの頃は、一曲一曲、弾けるようになるのが楽しくて、嬉しくて。これまで一度もやめたいと思ったことがありません。ヴァイオリンが好きという気持ちは、今なお増すばかりです!」

 大谷さんと共に華やかなステージを支えてきたのは、愛器「ピエトロ・グァルネリ」。なんと、1708年製!

「低音が豊かで、高音はつややか。大学院で出会った瞬間から気に入って、もう30数年、ずっと一緒、私の『分身』ですね」

 そんな大谷さんが練馬区に引っ越してきたのは、約30年前でした。

「商店街のお店のかたが親切なんです。忙しいスケジュールをこなせるのも、近所の皆さんに助けていただいているから。コンサートにも足を運んでくださって感謝しています」

「練馬区役所も大好きな場所です。眺めのいい展望レストランもよく知人を連れて行きますね。それと、私が19年、選考委員を務めるアトリウムミニステージ。たまたま通りかかった人でも聴ける気軽さがあって、『まちに音楽があふれる』という私の思いをまさに実現しています」

 区内外の方に、「音楽を含め文化を発信していきたい」という大谷さんは、華奢な体から大きなエネルギーがあふれ出しています。

(2016年6月2日)

6月15日(水)、 「みどりの風吹くまちに〜 トーク&スイーツコンサート」 練馬文化センターで開催。 鎧塚俊彦さん (オーナーシェフ)が来場! 会場でスイーツを販売

練馬区文化振興協会の 理事長就任記者会見で前川区長と

記者会見では、ヴァイオリンも 披露してくれました

愛器「ピエトロ・グァルネリ」

2011年9月、国際文化会館にて 大谷さんが発起人の1人となって、「"ありがとう"を音楽に載せて」コンサートを開催しました (写真提供:堀田正矩氏)

コンサートで観客席を巡って 演奏する大谷さん (写真提供:堀田正矩氏)

区役所1階で 第3水曜日のお昼に開催する アトリウムミニステージの様子。 出演者は眞田彩さん (写真提供: 練馬区文化振興協会)

井上ひさしさんの名言 「むずかしいことをやさしく、 やさしいことをふかく、 ふかいことをおもしろく…」は すべての精神に通じる、 と語る大谷さん

プロフィール

大谷康子さん

大谷康子さん

おおたに やすこ 東京芸術大学、同大学院博士課程修了。在学中よりソロ活動を開始。ヨーロッパでのリサイタルで好評を博し、その後、1公演で4曲のヴァイオリンコンチェルトを演奏、前代未聞の快挙で話題に。文化庁「芸術祭大賞」受賞。ジャズピアニスト山下洋輔氏とのコンサートなど、クラシック以外でも活躍。現在は、東京音楽大学教授、東京芸術大学講師などを兼任。2016年4月からはBSジャパン「おんがく交差点」で司会・演奏を務め、音楽の魅力を届けることに注力している。また、病院や施設、被災地での訪問演奏にも献身的。区役所でのアトリウムミニステージの選考委員を19年務めている。2016年4月、練馬区文化振興協会理事長に就任。

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