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#111 心のあかりを灯す会 会長
鈴木裕子さん
災害をこわがるより、
「物の準備」と「心の準備」を
「心のあかりを灯す会」は、2002年から練馬区で活動する防災団体です。主に練馬区内の小学校や児童館などで、手作りの紙芝居や人形劇を行い、子どもに向けた啓蒙活動を続けてきました。発足のきっかけは、会長・鈴木裕子さんが経験した、1995年1月17日の阪神・淡路大震災に遡ります。
「地震が起きた午前5時46分はまだ外が真っ暗でした。私が住んでいたのは比較的被害の少ない地域だったのですが、直後から停電になり、隣で寝ていた三男(当時4歳)の顔さえ確認できなくて。日の出でようやく部屋の状況が見えてくると、食器が割れて散乱し、金魚鉢もひっくり返り…という状態でした」
長男の受験があり、4日後には東京へ。その後、光が丘団地に引っ越した鈴木さん。2000年、練馬区防災課が避難拠点の運営を呼びかけた際、PTAの一員として参加しました。
「防災課の方から、アルミ缶を半分に切ってサラダオイルを少し垂らし、ティッシュのコヨリを芯にして灯りを作る方法を教えてもらいました。震災の暗闇の体験もあいまって、とても感動しました。それで神戸時代のことをお話したら、『ぜひみんなの前でしゃべって』と言われたんです」
神戸にある「希望の灯り」を分灯してもらい、三宅島から避難されている方々と共に防災イベントを行いました。そこで初めて鈴木さんは体験談を話したそうです。
「これを機に、私にできることは何でもやっていこうと思いました。そして、命の大切さや人への思いやりも伝えていきたいと、会の名前を『心のあかり』にしました」
活動は広がっていき、全国紙などのメディアで取り上げられていきます。そんななか、鈴木さんの思い出に残っているのは、一人の女の子の姿でした。
「ある児童館で人形劇をやったあと、小学1年生の女の子が、『すごくこわい。私はどうしたらいいですか?』と本気でこわがっていたんです。『心の準備と物の準備、両方ちゃんとすれば大丈夫よ。お家に帰って、ママとパパとよく話し合ってね』と説明し、先生やお母さんにもフォローしていただきました」
鈴木さんにぶれない信念があり、心と物の準備がきちんとできているからこそ、真摯な言葉として伝わるのだと感じました。
キーワードは「ローリングストック」
地域を守り助ける人間として
2014年1月、練馬区と「心のあかりを灯す会」、「NPO法人楽膳倶楽部」との協働により、冊子「食と防災」が発行されました。前半は、防災のための心と物の準備について。後半は、おいしく食べられるサバイバルレシピ満載。一家に一冊、備えておきたい冊子です。
「まず災害時を想定して、家族の1週間分の献立を冷蔵庫や備蓄品から考えてもらうところから始まります。そうすると、自然に『防災脳』にシフトしていきますよ。常備しておきたい1人あたりの1日の水の量は、飲料水で3リットル、生活用水で7リットルが目安です」
鈴木さんたちがすすめているのが、「ローリングストック」という方法。普段食べている食品を少しだけ多めに確保して、賞味期限の近いものから食べていき、減った分を買い足していきます。こうすれば、わざわざ非常食を買う必要もありません。
「震災のときでも、普段に近い温かい食事がとれればホッとするし、家族の健康も守れます。災害時には避難所へ…と思いがちですが、家が無事なら自宅が一番。プライバシーの保持は何ものにも変えがたいですよ」
「私は地域で災害対策本部を立ち上げて運営する側の人間なので、もともと逃げるつもりがないんです。隣近所の安否確認をして、助ける側。実際に災害が起こったら、すぐに本部へ駆けつけます」
2016年1月17日には、毎年開催している「灯そう! 心のあかり」が、ココネリホール(ココネリ3階)にて行われます。家族全員で"防災脳"になりましょう!
(2015年12月28日)
「物の準備」と「心の準備」を
「心のあかりを灯す会」は、2002年から練馬区で活動する防災団体です。主に練馬区内の小学校や児童館などで、手作りの紙芝居や人形劇を行い、子どもに向けた啓蒙活動を続けてきました。発足のきっかけは、会長・鈴木裕子さんが経験した、1995年1月17日の阪神・淡路大震災に遡ります。
「地震が起きた午前5時46分はまだ外が真っ暗でした。私が住んでいたのは比較的被害の少ない地域だったのですが、直後から停電になり、隣で寝ていた三男(当時4歳)の顔さえ確認できなくて。日の出でようやく部屋の状況が見えてくると、食器が割れて散乱し、金魚鉢もひっくり返り…という状態でした」
長男の受験があり、4日後には東京へ。その後、光が丘団地に引っ越した鈴木さん。2000年、練馬区防災課が避難拠点の運営を呼びかけた際、PTAの一員として参加しました。
「防災課の方から、アルミ缶を半分に切ってサラダオイルを少し垂らし、ティッシュのコヨリを芯にして灯りを作る方法を教えてもらいました。震災の暗闇の体験もあいまって、とても感動しました。それで神戸時代のことをお話したら、『ぜひみんなの前でしゃべって』と言われたんです」
神戸にある「希望の灯り」を分灯してもらい、三宅島から避難されている方々と共に防災イベントを行いました。そこで初めて鈴木さんは体験談を話したそうです。
「これを機に、私にできることは何でもやっていこうと思いました。そして、命の大切さや人への思いやりも伝えていきたいと、会の名前を『心のあかり』にしました」
活動は広がっていき、全国紙などのメディアで取り上げられていきます。そんななか、鈴木さんの思い出に残っているのは、一人の女の子の姿でした。
「ある児童館で人形劇をやったあと、小学1年生の女の子が、『すごくこわい。私はどうしたらいいですか?』と本気でこわがっていたんです。『心の準備と物の準備、両方ちゃんとすれば大丈夫よ。お家に帰って、ママとパパとよく話し合ってね』と説明し、先生やお母さんにもフォローしていただきました」
鈴木さんにぶれない信念があり、心と物の準備がきちんとできているからこそ、真摯な言葉として伝わるのだと感じました。
キーワードは「ローリングストック」
地域を守り助ける人間として
2014年1月、練馬区と「心のあかりを灯す会」、「NPO法人楽膳倶楽部」との協働により、冊子「食と防災」が発行されました。前半は、防災のための心と物の準備について。後半は、おいしく食べられるサバイバルレシピ満載。一家に一冊、備えておきたい冊子です。
「まず災害時を想定して、家族の1週間分の献立を冷蔵庫や備蓄品から考えてもらうところから始まります。そうすると、自然に『防災脳』にシフトしていきますよ。常備しておきたい1人あたりの1日の水の量は、飲料水で3リットル、生活用水で7リットルが目安です」
鈴木さんたちがすすめているのが、「ローリングストック」という方法。普段食べている食品を少しだけ多めに確保して、賞味期限の近いものから食べていき、減った分を買い足していきます。こうすれば、わざわざ非常食を買う必要もありません。
「震災のときでも、普段に近い温かい食事がとれればホッとするし、家族の健康も守れます。災害時には避難所へ…と思いがちですが、家が無事なら自宅が一番。プライバシーの保持は何ものにも変えがたいですよ」
「私は地域で災害対策本部を立ち上げて運営する側の人間なので、もともと逃げるつもりがないんです。隣近所の安否確認をして、助ける側。実際に災害が起こったら、すぐに本部へ駆けつけます」
2016年1月17日には、毎年開催している「灯そう! 心のあかり」が、ココネリホール(ココネリ3階)にて行われます。家族全員で"防災脳"になりましょう!
(2015年12月28日)
神戸の東遊園地に設置された 「希望の灯り」から分灯された 灯りが会の原点になっています
毎年開催しているイベント 「灯そう!心のあかり」で 震災の体験を話す鈴木さん
練馬区との協働事業で 作成した「食と防災」
家にある身近な食材で作る サバイバル飯(略してサバ飯)。 震災に備えてカセットコンロを 用意しておくと役立ちます。 左上はポリ袋で炊いたごはん
普段持ち歩くリュックの中身は ライト、ラジオ、地図、手拭い、 磁石、携帯トイレ、氷砂糖など。 「自分の身は自分で守る」が 防災の基本です
おすすめグッズの一つ、 アウトドア用のクッション。 コンクリートの上でも おしりが冷えません
簡易トイレを利用する際も これがあれば目隠しに
「地域で顔の見える関係こそが、一番の防災になります」と鈴木さんからのメッセージ
プロフィール
鈴木裕子さん
すずき ゆうこ 心のあかりを灯す会会長。光が丘在住、3人の息子をもつ母親。1995年、神戸在住時に阪神・淡路大震災にあう。4日後、長男の大学受験を機に東京へ避難し、その後、光が丘へ引っ越す。2002年、練馬区防災課(現・区民防災課)のバックアップにより、区民防災組織「心のあかりを灯す会」を立ち上げる。現在、常時活動しているメンバーは15名ほど。練馬区内外から講演会の依頼があり、手作りの紙芝居や人形劇を行っている。小学校では主に低学年を対象にした活動が多い。「ねりまNPOニュース」2013年9月〜2014年7月にかけて、「防災知恵袋」というコラムを執筆。練馬で好きな場所は、光が丘公園。サンドイッチやデザートを持って、「ひとりランチ」を楽しむことも。
心のあかりを灯す会