特集記事 Reviews

#099東京ワイナリー 代表
越後屋美和さん

練馬の野菜が大好き!
ワインと共に野菜の味も伝えたい


 都内初のワイナリーとして話題になっている、大泉学園町の住宅街にできた「東京ワイナリー」。早速、仕込みシーズン真っ盛りのワイナリーにお邪魔して、醸造人の越後屋美和さんにお話を伺ってきました!

「大田市場で仲卸の仕事をしていた時に、練馬産キャベツなどの野菜が美味しくてびっくりしたんです。その時に、大泉のブドウ農家さんと知り合って、『一緒に何かしたいな。東京の野菜の美味しさを知ってもらいたい』というのが、ワイン造りのきっかけです」

 一念発起した越後屋さんは、2年間、山梨や広島で修業をして、2014年9月に果実酒製造免許を取得。「東京ワイナリー」を立ち上げました。

 元は新聞配達所だったという小スペースで、本格的な国産ワインを製造。10月からは販売もスタートしました。東京原産のブドウ「高尾」を使ったワインも生産されており、こちらはすでに予約分が完売。

「ワイン造りは技術ではなく、いいブドウがあってこそ。食用でもワイン用でも、ブドウによって味が違うという点は一緒なんです。どうすれば、それぞれのブドウのポテンシャルを最大限に引き出せるかを、いつも考えています」

 食べることも、飲むことも大好きだという越後屋さん。ワインは野菜と一緒に味わえるように、やや辛口の仕上がりにしているそう。

「冬は温野菜がおすすめですね。塩を振るだけでもいいし、日本のワインは意外と味噌やお醤油とも合います。練馬は小さい農家さんが多いのですが、手間隙かけていて本当に美味しい野菜ができるんだと思います。ここから、ワインと一緒に、野菜の美味しさも発信していきたいですね」



一番幸せな瞬間は…
酵母のプチプチという音を聞く時


「性格は猪突猛進なんですが、ワイン造りは『一生懸命、丁寧に』をこころがけています」という越後屋さんの経営手法も注目です!

 力仕事の多い仕込みには、Facebookでその都度ボランティアを呼びかけて手伝ってもらい、ネットを通じて多数の支援者から資金調達する「クラウドファンディング」も活用しました。

「この計画を夫に話した時は『無理でしょ?』と言われました。でも、細かいプランを説明したら納得してもらえた。今は夫も練馬に住んで、ここから職場の大田市場に通い、休みの日にはワイン造りを手伝ってもらっています(笑)」

 都市型のワイナリーとはいえ、造り方は通常のワインと同じ。しかも、瓶詰めなど手作業でやる仕事がたくさんあります。「転職女性1人で…」「都内唯一のワイナリー」と新聞や雑誌などで多く取り上げられ、注目されている越後屋さん。Facebookでボランティアを呼びかけると、ワイン造りに関わってみたい方や応援したい方が多く、30分以内には応募がいっぱいになってしまう…というのだから驚きです!

 取材の日は、「破砕・除梗(じょこう)」という作業。機械にブドウを入れ、ハンドルを回してブドウを軽くつぶし軸だけ除き、バケツに落ちた実、皮、種をタンクに入れるという仕込みの日でした。

 2人のボランティアさんにテキパキと指示をだし、醸造室はあっという間にブドウの香りと空箱でいっぱい。「この作業はチームワークが大事」と越後屋さんは話しますが、2人とは実は初対面。前向きなエネルギーで、どんどん周りを巻き込んでいく力強さを感じます!

 自分で造ったワインを飲む感動は、なかなか味わえないものかと思いますが、「発酵している時が一番好き。酵母からプチプチという音が聞こえてくると、生きてるんだ、かわいいなって思いますね」一度聞いてみたいですね。

 将来的には、店舗の中に、ワインに合う東京産野菜料理などを提案するスペースも併設するつもりだそう。たった一人だけど、多くの人が関わる東京ワイナリー。野菜好き、ワイン好きが集う、新しいスポットになりそうです!

(2014年12月26日)

にごり微発泡の生ワインなど 時期によってワインの種類は 変わります (写真支給:越後屋さん)

「東京ワイナリー」外観。 大泉学園駅北口から徒歩約10分

「果実酒醸造免許通知書」を 受け取った記念の一枚。 通りがかった人に 撮ってもらったそう(笑) (写真支給:越後屋さん)

醸造室に並ぶピカピカのタンク。 この中にブドウの果汁を入れて 発酵させます

仕込み待ちの青森産の ぶどう「スチューベン」。 1トンあります!

横浜から駆け付けた ボランティアさん。 1トンのブドウと格闘しましたが 楽しそう!

プチプチと発酵している様子。 越後屋さんが幸せを 感じるひととき (写真支給:越後屋さん)

圧搾の様子 (写真支給:越後屋さん)

手際がよく、 またたく間に仕事が進む…。 越後屋さんの気さくな人柄で 人の輪が広がっています

プロフィール

越後屋美和さん

越後屋美和さん

1976年生まれ、横浜市出身。株式会社HORIGO 東京ワイナリーの代表。玉川大学農学部卒。在学中は「農家になりたい」と思っていたというほど、農業への理解と関心が高い。卒業後、大田市場で野菜の仲卸の仕事に就く。そこで練馬産キャベツの甘さに驚いたこと、「高尾」のブドウに魅了されたことで一念発起。2年間の修業後、2014年に練馬区に転居し、同年9月、大泉学園町に「東京ワイナリー」を設立。都産都消の発信地として、区内外の人を呼べるように広めていくのが夢! 醸造から販売までを女性一人で行っているが、応援してくれる仲間をSNSで募り、大勢の人が関わっている。 練馬に来てからは休みがなく、「そのうち石神井公園に行ってみたい」とのこと。

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