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#089 アカオアルミ株式会社 代表取締役
赤尾 由美さん
1円玉の円形を作れる
唯一の工場が練馬にある!
2014年4月1日、消費税が8%に上がります。そこで出番が増えるのが、1円玉! それを日本で唯一作れる工場が、練馬にあるってご存知ですか? 旭町にあるアカオアルミは、終戦直後の1947年に創業。1964年から1円用円形(えんぎょう)の生産を開始しました。円形とは、造幣局で刻印される前の、フチが付いた丸い状態のものです。
「専用の設備を持つのは、日本でうちだけなんですよ。だから『忙しいでしょ?』と言われますが…。確かに、1989年の消費税3%増税時は、ひと月で300トン、3億円分の1円玉を1年間作っていましたが、ここ数年はキャッシュレス化が進んだこともあり、注文がない状態だったんです」
「2013年秋、久々に注文が来ました。人手が足りず、定年退職された方を5〜6人呼び戻しました。1枚1gになる厚さにプレスで抜き、フチを盛り上げ、洗浄し、潤滑処理を施して出荷します」
と、1円玉の危機(?)を語ってくれたのは、圧延製造部門のトップ・中尾芳典さん。この道34年のベテラン技術者です。2代目社長の赤尾由美さんが、その言葉をつなぎます。
「注文がない間もメンテナンスをしないと、機械は維持できない。人も機械も、サビつくんです。正直な話、やめようかとも思ってたくらいです(笑)。でも、『1円玉作ってる会社なの!?』と言われることが多くて…いい宣伝になるのかなって(笑)」
明るく笑いながら、次々本音を繰り出す赤尾さん。彼女がしゃべると、その場が明るく華やぎます。
アルミは生活に密着した素材
「ものづくり」で誇りが持てる
「うちの本業は、圧延(アルミを薄く延ばす加工)です。でも子どもの頃は父親から、『鍋の会社』と聞いてました。子どもには『圧延』なんて難しいと思ったんでしょうね。だからずっと、父親は鍋をトンカン作ってるんだって思ってました(笑)」
現在日本のアルミのシェアは、大手企業5社が95%、中小企業4社が残りの5%を占めます。アカオアルミは中小企業ながら、大手と同じ製法をとれる唯一の会社。黄金色のしゅう酸鍋は、耐食性や耐久性は、着色物とは比較にならないと自負します。
「でも正直、私はアルミには興味がないんですよ(笑)。『アルミはあなた方に任せた!』と社員に言って、技術には口を挟みません。なにせ私が継いだとき、借金が100億あったんですよ。15年かけて業務を効率化し、ようやく半分になりました。でもまだ、半分ですからねえ(笑)」
そんな苦労話をも明るく語ってしまう赤尾さんだからこそ、「この人についていけば大丈夫!」と信頼されるのかもしれません。
「リーマンショック以降、やれることがないくらい、すべてを切り詰めました。残るのはもう、人への教育だけだろうと。社員と向き合っていったら、自然とその結論にたどりつきました。経営はまだ厳しいですが、個人的にはここ数年、とっても充実しているんですよ!」
「練馬が大好きですから、倒産するまで練馬から引っ越ししません(笑)」と宣言する赤尾さん。地元の小学生向けに工場見学を開いたり、消防訓練に参加したり、緊急時の地下水提供の契約をしたり、自社製品の鍋などのアウトレットセールを開催したりと、近隣とのつながりも大切にしています。
「東京に24時間稼働している圧延工場が残っているのは奇跡的! 頑張れば世界遺産になれるって、社員には言ってるんですけどね(笑)」
「また、うちは平均年齢が低いほうで、30代で中堅のポジションにつけます。年齢・性別・学歴など関係なく、やる気と実力があれば何段跳びもできる。東京でものづくりができる、誇りが持てるって、面白いじゃないですか!」
約1000℃の溶解炉のごとくアツい赤尾社長とものづくりに燃えるアカオアルミの社員。今後のさらなる展開にも注目です!
(2014年3月7日)
唯一の工場が練馬にある!
2014年4月1日、消費税が8%に上がります。そこで出番が増えるのが、1円玉! それを日本で唯一作れる工場が、練馬にあるってご存知ですか? 旭町にあるアカオアルミは、終戦直後の1947年に創業。1964年から1円用円形(えんぎょう)の生産を開始しました。円形とは、造幣局で刻印される前の、フチが付いた丸い状態のものです。
「専用の設備を持つのは、日本でうちだけなんですよ。だから『忙しいでしょ?』と言われますが…。確かに、1989年の消費税3%増税時は、ひと月で300トン、3億円分の1円玉を1年間作っていましたが、ここ数年はキャッシュレス化が進んだこともあり、注文がない状態だったんです」
「2013年秋、久々に注文が来ました。人手が足りず、定年退職された方を5〜6人呼び戻しました。1枚1gになる厚さにプレスで抜き、フチを盛り上げ、洗浄し、潤滑処理を施して出荷します」
と、1円玉の危機(?)を語ってくれたのは、圧延製造部門のトップ・中尾芳典さん。この道34年のベテラン技術者です。2代目社長の赤尾由美さんが、その言葉をつなぎます。
「注文がない間もメンテナンスをしないと、機械は維持できない。人も機械も、サビつくんです。正直な話、やめようかとも思ってたくらいです(笑)。でも、『1円玉作ってる会社なの!?』と言われることが多くて…いい宣伝になるのかなって(笑)」
明るく笑いながら、次々本音を繰り出す赤尾さん。彼女がしゃべると、その場が明るく華やぎます。
アルミは生活に密着した素材
「ものづくり」で誇りが持てる
「うちの本業は、圧延(アルミを薄く延ばす加工)です。でも子どもの頃は父親から、『鍋の会社』と聞いてました。子どもには『圧延』なんて難しいと思ったんでしょうね。だからずっと、父親は鍋をトンカン作ってるんだって思ってました(笑)」
現在日本のアルミのシェアは、大手企業5社が95%、中小企業4社が残りの5%を占めます。アカオアルミは中小企業ながら、大手と同じ製法をとれる唯一の会社。黄金色のしゅう酸鍋は、耐食性や耐久性は、着色物とは比較にならないと自負します。
「でも正直、私はアルミには興味がないんですよ(笑)。『アルミはあなた方に任せた!』と社員に言って、技術には口を挟みません。なにせ私が継いだとき、借金が100億あったんですよ。15年かけて業務を効率化し、ようやく半分になりました。でもまだ、半分ですからねえ(笑)」
そんな苦労話をも明るく語ってしまう赤尾さんだからこそ、「この人についていけば大丈夫!」と信頼されるのかもしれません。
「リーマンショック以降、やれることがないくらい、すべてを切り詰めました。残るのはもう、人への教育だけだろうと。社員と向き合っていったら、自然とその結論にたどりつきました。経営はまだ厳しいですが、個人的にはここ数年、とっても充実しているんですよ!」
「練馬が大好きですから、倒産するまで練馬から引っ越ししません(笑)」と宣言する赤尾さん。地元の小学生向けに工場見学を開いたり、消防訓練に参加したり、緊急時の地下水提供の契約をしたり、自社製品の鍋などのアウトレットセールを開催したりと、近隣とのつながりも大切にしています。
「東京に24時間稼働している圧延工場が残っているのは奇跡的! 頑張れば世界遺産になれるって、社員には言ってるんですけどね(笑)」
「また、うちは平均年齢が低いほうで、30代で中堅のポジションにつけます。年齢・性別・学歴など関係なく、やる気と実力があれば何段跳びもできる。東京でものづくりができる、誇りが持てるって、面白いじゃないですか!」
約1000℃の溶解炉のごとくアツい赤尾社長とものづくりに燃えるアカオアルミの社員。今後のさらなる展開にも注目です!
(2014年3月7日)
左側の1円玉のもとになる
円形で納品する(左)。
1枚60〜80銭の価値とのこと
5000坪の本社工場の一部。
(練馬区旭町)
アルミの融点は650℃。
約1000℃の溶解炉は
数メートル離れていても熱い!
アルミが圧延された状態。
高い技術力で、0.3mm〜15mmの
厚さに対応できる
業務用調理製品は今も
高シェアで、リピーターも多い
口紅、カメラの部品、LED、
チューブ薬、ライター、
パソコンのHDDなど、
アカオアルミの製品は
生活全般にわたる
アルミ繊維不織布では
特許を取得。
高速道路側面の吸音材などに
使用されている
圧延製造部長の中尾芳典さん。
「素材産業は地味だけど面白い。
製品を支えているという
誇りが持てます」
総務課の赤尾良彦さん。
「女性が強い会社で、
産休を5回とった社員も
いるんですよ」と
会社の魅力を力説
プロフィール
赤尾 由美さん
1965年、豊島区生まれ。明治大学卒業。アカオアルミ株式会社の二代目代表取締役。1996年に創業者の父親が亡くなり、会社を継ぐ。父からは「株主として幹部を数字で評価すればいい」と聞いていたが、中小企業では所有と経営を分けることは難しく、「仕事の苦労、金の苦労、人の苦労のひと通り経験した(笑)」という。練馬区の他に栃木県、群馬県に4つの工場を有し、現在の従業員は約300名。3つの事業部があり、売上のうちアルミの圧延が6割、鍋などの製品が3割、不動産業が1割を占める。アイスクリーム専用スプーンなど、自社製品の開発にも精力的。女性の社員・管理職も多い。プライベートでは二児の母。
アカオアルミ株式会社