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#074 練馬ママ漫画ルーム「よんこま」代表
うえきあやこさん

ママが“自分”に戻れる場所
無理に誰かと話さなくてもいい
 

 練馬駅北口から徒歩4分。世界初(?)の「よんこま」とは、簡単に説明すると、漫画を置いたママと赤ちゃんの居場所です。うえきさん自身の子育て経験から、「ママたちが心から笑える場所を作ろう」と、「よんこま」をオープンしました。

 「長男が全然寝ない子で、初めての子育てにいっぱいいっぱいの生活でした。納豆さえかき混ぜられない(笑)。そんな状況では、子育てに関する情報も集められず、家から出られない。だんだんストレスや孤独を感じて、息子がかわいくないわけじゃないけど、頬ずりスリスリして『かわいい〜』なんてする心の余裕はなかったですね」

 大変だった当時の様子を、明るく話してれたうえきさん。「よんこま」の利用者を、妊婦とハイハイ前までの赤ちゃん連れのママに限定した超ニッチ産業ですが、そのスタイルにはママ目線のこだわりがたくさん盛り込まれています。

 「中心は子どもではなくお母さん。お母さんが自分の楽しみに時間を使えて、無理に誰かと話さなくてもいい場所、しかも乙女心を刺激される場所にしたかったんです。『○○ちゃんのお母さん』として、子どもの情報交換をするような場所は公共にあるので、競合しないようにとも考えました。私自身、一番余裕がなかった時は、人付き合いなどが不安で、そういう場所に行けなかったというのもあります。ここに来るまで、電車や人混みが怖くて、家から出てなかったというお母さんたちも、けっこういるんですよ」

 無理に話さなくてもいい場所、ではあるけれど、見ていると会話がまったくないわけではない様子。日によっては、ベリーダンス講習やトランプ大会などのイベントも開かれ、気づくと初対面の人たちが仲良くなっているのだとか。

 「この漫画おもしろいよ〜。あっ、私も読んだよ。とか、そういうのをきっかけに、自然に会話が始まっていますね。家庭の話や、時には政治の話、もちろん子どもの話も。イベントは自由参加で、私も一緒になって涙が出るほど笑いころげてます。笑うことは本当に大事。今、赤ちゃんがかわいく思えず悩んでたりするお母さんは、たぶんちょっと疲れているだけ。ここに来て思いっ切り笑って、自分を取り戻してほしいですね」 



2年目は新たな展開へ動き出す
目標は世界。本気です!(笑)
 

 練馬発、世界初を自負する「よんこま」。「日本のコミック文化を象徴しているし、世界的に見ても絶対おもしろい!」という自信の反面、オープンからの1年は、やっていけるかどうか不安だらけだったそう。

 「お客さん来るかな、口コミとネットだけでやっていけるかなっていつも不安でした。5か月目でやっと少し黒字になって、ほっとしました。最近は予約がいっぱいになることもあり、他県から来てくださる方もいて。『私だけじゃなくて、みんなこんな場所がほしかったんだ!』って、確信しました。来年からは、企業を回ったり営業活動に力を入れたいと思っています! サービスも充実させたいし、ビジネスとして自分の収入も確保したい。私も子どもにかわいい服とか着せたいですから(笑)」

 と、ママの顔を覗かせながら、経営者として次なる目標を語るうえきさん。不安や苦労があっても、「世界」という目標があり、来てくれるお客さんたちのおかげで乗り越えられた、と笑顔で話します。

 「ここをやっているのは私一人ですが、頼りない私をお客さんたちが支えてくれています。みんな、一緒に泣いて、笑って、バカなことをいっぱいした同級生のようなもの。『お母さんを救う』とか、大それたことではなくて、ママも私も、障害がある人も、みんながハッピーになれる、そういうビジネスがあるって証明したいですね」

 地域の空き店舗などを活用しながら、あちこちに「よんこま」が広がっていくといいですね!

(2012年12月3日)

漫画を読んだり、
おしゃべりしたり、
ときにはトランプ大会もあり
(写真提供:よんこま) 


500冊以上の漫画がズラリ!
本棚は低く、地震でも安心 


赤ちゃんもお母さんも
リラックス〜! 
(写真提供:よんこま)


ベリーダンス部の練習風景。
曜日によって、アクセス部や
英語ダメ部などもあります
(写真提供:よんこま) 


最強☆40回ご来店ママ
(写真提供:よんこま)


ノンアルコールで
盛り上がってみたり!
(写真提供:よんこま)


知的障害のあるマイマイさんは
週2日、おそうじを担当。
「よんこま」の看板娘です


かわいらしい引き戸の
「よんこま」入口

プロフィール

うえきあやこさん

うえきあやこさん

練馬ママ漫画ルーム「よんこま」の代表。出産直後に自転車事故にあい、自宅安静の際にふと思いついた「よんこま」のアイデアを、締切り間際だった「内閣府地域社会雇用創造事業」コンペに応募し、入賞した。賞金の50万円も資金の一部に充てて、空き倉庫を活用し、2011年12月「よんこま」をオープン。所蔵500冊を超えるマンガ本の中で、一番好きなマンガ家はよしながふみ。夢は米TIME紙の表紙を飾ること。区内で好きな場所は「としまえん」と「子どもの通う保育園」。優しい先生方に植木さんも毎日癒されているそう。2児の母。

練馬ママ漫画ルーム「よんこま」公式ホームページ

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