特集記事 Reviews
#064 練馬区立美術館 館長
若林 覚さん
人脈の基本は、人を信用し、
人を好きになること
つい家に引きこもりがちな季節にこそオススメしたいのが、あったかい美術館での芸術鑑賞。中村橋駅から徒歩3分の練馬区立美術館長の若林さんにインタビューしました。サントリー株式会社の宣伝事業部長、文化事業部長、サントリー美術館副館長などの経歴を持つ、まさに“デキる男”です。
「2010年で練馬区立美術館が25周年という契機に、民間の力を入れたいということで声がかかりました。元々私は、アーティストでも美術史家でもなく、企業の宣伝・文化畑の出身です。そんなキャリアを持った館長が珍しいからこそ、それを活かした運営がしたいと思いました。大事にしているのは、マネージメント、マーケティング、アドバタイジングの3つの視点です」
若林さんが館長を務めて、2012年3月で丸2年が経ちますが、この間どんな変化があったのでしょうか?
「文化施設であれ、企業であれ、自分たちがどんな存在かを外にアピールするための言葉とビジュアルが必要です。そこで、『ときめきの美 いま 練馬から』のキャッチコピーのもと、ロゴを公募。決定したロゴを使ってグッズも作りました」
「館員一人ひとりが収支の観点を持ち始めたのも大きいですね。成功したらその要因は何だったのか、失敗だったらどんな理由だったのか考えれば、次の仕事が楽しくなるんです」
収入が増える=多くの人が見に来てこその美術館。長年の経験に支えられた宣伝の手腕が、各所で発揮されています。
「マスコミとの共同主催にしたり、外国の各大使館に後援をお願いしたり、企業の協賛を募ったり…。これまで培った人脈を最大限活用しています。TV番組『美の巨人たち』で度々取り上げて頂きましたが、それも制作側と個人的なつながりがあるおかげです。あるものを少しでもメジャーに仕立て上げるのがポイントですね」
持つべきものは人脈! 若林流人脈術を伺うと、シンプルな答えが返ってきました。
「人を信用し、人を好きになること。それから、前向きに説得する力です」
未来像は…
美術館一帯を美術空間に!
世阿弥の言葉にならい、「新しいこと、珍しいこと、面白いこと」をモットーにしている若林館長。この3か条に当てはまっているか自問自答しつつ、前例のないことに果敢に挑戦するのだそうです。
「大規模な展覧会はできなくても、他ではできない、知る人ぞ知る作家に光を当てて世に出すなどエッジの効いた展覧会を開いて、“練馬区立美術館はなかなかやるな”と思わせたい。美術展のPRは全国に行き渡るので、練馬の広告塔だという認識をさらに強くしたいですね。いい展覧会を開くことが、練馬のブランドイメージアップにつながるんです」
常に広い視野で考える若林館長。彼が描く、練馬区立美術館の“未来像”は…?
「当館の魅力は、都心からも駅からも近いこと。駅から数分で来られる美術館は都内では珍しい。その立地を活かして、中村橋駅から美術館一帯を美術空間に整備したいんです。例えば動物の彫刻を置いて子どもが絵を描いたり、芝生で寝転がったり…。『練馬で一番好きなエリア!』と言ってもらえる空間にしたい、なんて勝手に思い描いているんです」
「スペイン北部のバスク地方のビルバオという街には素晴らしい美術館があって、年間100万人の観光客が訪れます。美術館の佇まいそのものがアートなんです。人口30万人の辺境都市でできるんですから、人口71万人の練馬でできないわけがない。もっと創造と革新に時間とエネルギーをかけるべき。叡智を結集しないともったいないです」
館長の力強い言葉を聞いていると、いつか必ず実現するような気がしてくるから不思議です。街全体が芸術空間…、そんな素敵な練馬になる日が楽しみですね!
(2012年2月1日更新)
人を好きになること
つい家に引きこもりがちな季節にこそオススメしたいのが、あったかい美術館での芸術鑑賞。中村橋駅から徒歩3分の練馬区立美術館長の若林さんにインタビューしました。サントリー株式会社の宣伝事業部長、文化事業部長、サントリー美術館副館長などの経歴を持つ、まさに“デキる男”です。
「2010年で練馬区立美術館が25周年という契機に、民間の力を入れたいということで声がかかりました。元々私は、アーティストでも美術史家でもなく、企業の宣伝・文化畑の出身です。そんなキャリアを持った館長が珍しいからこそ、それを活かした運営がしたいと思いました。大事にしているのは、マネージメント、マーケティング、アドバタイジングの3つの視点です」
若林さんが館長を務めて、2012年3月で丸2年が経ちますが、この間どんな変化があったのでしょうか?
「文化施設であれ、企業であれ、自分たちがどんな存在かを外にアピールするための言葉とビジュアルが必要です。そこで、『ときめきの美 いま 練馬から』のキャッチコピーのもと、ロゴを公募。決定したロゴを使ってグッズも作りました」
「館員一人ひとりが収支の観点を持ち始めたのも大きいですね。成功したらその要因は何だったのか、失敗だったらどんな理由だったのか考えれば、次の仕事が楽しくなるんです」
収入が増える=多くの人が見に来てこその美術館。長年の経験に支えられた宣伝の手腕が、各所で発揮されています。
「マスコミとの共同主催にしたり、外国の各大使館に後援をお願いしたり、企業の協賛を募ったり…。これまで培った人脈を最大限活用しています。TV番組『美の巨人たち』で度々取り上げて頂きましたが、それも制作側と個人的なつながりがあるおかげです。あるものを少しでもメジャーに仕立て上げるのがポイントですね」
持つべきものは人脈! 若林流人脈術を伺うと、シンプルな答えが返ってきました。
「人を信用し、人を好きになること。それから、前向きに説得する力です」
未来像は…
美術館一帯を美術空間に!
世阿弥の言葉にならい、「新しいこと、珍しいこと、面白いこと」をモットーにしている若林館長。この3か条に当てはまっているか自問自答しつつ、前例のないことに果敢に挑戦するのだそうです。
「大規模な展覧会はできなくても、他ではできない、知る人ぞ知る作家に光を当てて世に出すなどエッジの効いた展覧会を開いて、“練馬区立美術館はなかなかやるな”と思わせたい。美術展のPRは全国に行き渡るので、練馬の広告塔だという認識をさらに強くしたいですね。いい展覧会を開くことが、練馬のブランドイメージアップにつながるんです」
常に広い視野で考える若林館長。彼が描く、練馬区立美術館の“未来像”は…?
「当館の魅力は、都心からも駅からも近いこと。駅から数分で来られる美術館は都内では珍しい。その立地を活かして、中村橋駅から美術館一帯を美術空間に整備したいんです。例えば動物の彫刻を置いて子どもが絵を描いたり、芝生で寝転がったり…。『練馬で一番好きなエリア!』と言ってもらえる空間にしたい、なんて勝手に思い描いているんです」
「スペイン北部のバスク地方のビルバオという街には素晴らしい美術館があって、年間100万人の観光客が訪れます。美術館の佇まいそのものがアートなんです。人口30万人の辺境都市でできるんですから、人口71万人の練馬でできないわけがない。もっと創造と革新に時間とエネルギーをかけるべき。叡智を結集しないともったいないです」
館長の力強い言葉を聞いていると、いつか必ず実現するような気がしてくるから不思議です。街全体が芸術空間…、そんな素敵な練馬になる日が楽しみですね!
(2012年2月1日更新)
キレイな花壇のある
練馬区立美術館エントランス
日本大学芸術学部
大学院生・和久井遥さんによる
作品がベースとなったロゴマーク
ロゴマークを使用した
パーツホルダー、ノート、
コットンバックの各グッズは、
受付で発売中
練馬区立美術館ニュースは
1年間の展示スケジュール
などが掲載されています。
毎年4月1日発行
平成24年2月14日まで
入場無料の特集展示。
「森井荷十コレクション展」の
ポスター
中村正義≪三島由紀夫像≫
1968年
平成24年2月19日~4月1日
特別展「中村正義
―日本画壇の風雲児、
新たなる全貌」
話の中に出てきた
ビルバオ・グッゲンハイム美術館
お話中も、ぐいぐい引っ張っていく
リーダーシップを感じました
プロフィール
若林 覚さん
1949年生まれ。1971年サントリー株式会社に入社し、宣伝部で様々な分野の宣伝に携わる。世界屈指の音楽ホールであるサントリーホールを提案、サントリーミステリー大賞の創設など、大企画も実現させた。2006年、サントリー美術館副館長に就任(のちに兼支配人、顧問を務める)。2009年に学芸員の資格を取得。2010年4月より、練馬区立美術館館長に就任された。子ども時代に山野を駆け巡った記憶からか、趣味は今も山登り。さらにジョギング、ゴルフ、美術館巡りや音楽鑑賞など、オフの日もアクティブ! 映画は年間50本は観るという。
練馬区立美術館
練馬区立美術館の公式ブログ
『私の美術漫歩』を連載中