特集記事 Reviews

#038 アニメーター
遊佐かずしげさん

もうすぐ「練馬アニメカーニバル」
練馬とアニメのご縁って?


 練馬区は日本のアニメ発祥の地です。東映が『東洋のディズニー』を目指して大泉の撮影所で、日本初の劇場用カラーアニメを制作をしたことが原点。手塚治虫さんもこの地でプロダクションを構え、日本初の連続テレビアニメ「鉄腕アトム」を制作しました。現在も区内には90社を超えるアニメ関連会社があり、日本最大の集積地となっています。

 今年もとしまえんで、11月21日~23日に「練馬アニメカーニバル2009」が開かれます。イベントに先立ち、練馬アニメーション協議会のメンバーである、アニメーターの遊佐かずしげさんにお話をうかがいました。

 「小学校低学年の頃でしたね、隣のお兄さんが、目の前でさらさらっと『いなかっぺ大将』のニャンコ先生の絵を描いてくれたんです。いつもテレビで見ていた番組なので本当に衝撃的でした!」
 なんとその方は、竜の子プロダクションのアニメーター兼演出をされてた方だったのです。後に、遊佐さんは竜の子プロダクションに入社…、ご縁の糸で繋がっていたんですね。

 少年の頃の遊佐さんは、絵を描くことが何より大好きで、チラシの裏などにひたすら絵を描き、学校の絵画展では必ず入選していたほどでした。
 「学生のころは、独学でお寺や塔、風景等の写実的な絵を描いていました。僕はいわゆるアニメファンではなかったんですよ(笑)」



大手プロダクションを飛び出した!
力を出し忍耐力で運はめぐる


 「当初はデザイン関係の仕事に進もうと思っていましたが、アニメーションのことが頭に浮かんで、竜の子プロの門を叩きました。ニャンコ先生の絵を書いてもらったことが、心の片隅にずっと残っていたんでしょうね」

 その後、フリーアニメーターとして幾度かプロダクションを変えながら、『ムーミン』、『タッチ』、『うる星やつら』、『まんが日本昔ばなし』、『トッポジージョ』『ピーターパン』など、名だたる作品に携わってきました。

 そんな華々しい作品のかげには、少年時代の複雑な家庭環境、他社の借金の肩代わりに働いたりと苦労もたくさんあったそうです。しかし、遊佐さんにかかると涙ものの話もユーモアたっぷりで思わず吹き出してしまうほど。そのとびきりの明るさが、夢のある作品を生み出すんだなあ、と思わず納得です。

 20代後半には単身渡米。某スタジオの門をたたくも断念し、仕事の方向性を見失いかけていたころがあったそうです。
 「このころ実写やパペット映像の監督、印刷物のデザインなどいろいろなことに挑戦し、3Dアニメーションも独学で覚えました」

 会社を独立した頃、『たのしい名作童話館』という童話をビデオシリーズ化する仕事が舞い込み、監督としてストーリーや絵コンテ、映像すべてをご自身で作り上げたとのこと。この作品が評価されて、タイトルアニメーションや短編アニメーション、テレビCMの仕事が増えるようになっていきました。



子どもの喜ぶ顔が好き!
気がつけばこの道30年

  「『ノンタン』の作者であるキヨノサチコ先生との思い出は、私にとって大切な宝物です。ご一緒した『トムトム☆ブ-』では、作品を通して多くのことを学びました。昨年亡くなられてしまったのですが、本当に心のあたたかい素敵な方でした…」
 早すぎるお別れは残念でなりませんが、『トムトム☆ブ-』はキヨノさんと遊佐さんの集大成となり、作品として生き続けます。

 「気が付けば30年です。自分でもびっくりしますよ」と遊佐さん。現在、メビウス・トーンでは「くるねこ」という短編アニメも制作中とか。数え切れないほど多くの作品を世に送り出してきましたが、最近は後進の育成にも力を注ぎ、専門学校や大学で講演することも多いそうです。

 「練馬アニメカーニバル2009」では、遊佐さんがアニメーションの作り方や体験ブースを担当します。ステージにも上がる予定で、子どもたちへのパフォーマンスも予定されています。ぜひ! お出かけください。 

(2009年11月1日更新)


数秒のアニメーションを作るのも、
地道で根気のいる作業が…。
(遊佐さん写真提供)


NHK教育テレビ
「にほんごであそぼ」の文字アニメ。
遊佐さんによって文字に
命が吹き込まれ、
元気に動き出します。
(遊佐さん写真提供)


NHKの時代劇「陽炎の辻」
シリーズの
エンディングの猫のアニメーションも
遊佐さんの作品です。
2010年1月1日正月時代劇
「陽炎の辻スペシャル」でも
ご覧いただけます。
(遊佐さん写真提供)


話術も巧みで
エネルギッシュな遊佐さん。
アニメにかける情熱は
誰にも負けません!


NHKのスタジオで「陽炎の辻」の
エンディングアニメーションを
編集中!
 (遊佐さん写真提供)


大学でレクチャーする遊佐さん。
(遊佐さん写真提供)


『トムトム☆ブー』原作者の
キヨノサチコ先生とハワイにて。
遊佐さんはキヨノ先生から
信頼されて
この作品をクレイアニメや
CG、クレヨン画などアニメーション
満載のミュージカルに仕上げました。
脚本と音楽の作詞も
数曲担当されました。
(遊佐さん写真提供)


昨年のねりたんアニメ
カーニバルでは、
子どもたちがパラパラアニメに
挑戦しました!!
(遊佐さん写真提供)


遊佐さんお気に入りの
「やきとり大吉 豊島園店」。
焼き鳥はもちろん「鳥しめじ」が
おいしい!(遊佐さん写真提供)

プロフィール

遊佐かずしげさん

遊佐かずしげさん

1960年生まれ。2D&3Dアニメーション作家・演出家。竜の子プロダクションでこの世界に入り、幾つかのプロダクションを経て、個人事務所メビウス・トーンを設ける(練馬区所在)。子供向け作品が多く、NHK教育テレビの「にほんごであそぼ」、「いないいないばぁ」、「ピタゴラスイッチ」、「トムトム☆ブー」、「おじゃる丸」などを手がける。最近は短編アニメーション、テレビCMの仕事が中心。若手育成にも力を入れ、専門学校で特別講師としてレクチャーしたり、JAniCA(日本アニメーター・演出協会)の活動にも参加している。

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