特集記事 Reviews

#037 ヨーヨーショップ「スピンギア」店長
長谷川 貴彦さん

一人遊びからパフォーマンスへ
ヨーヨーの世界チャンピオン誕生!


 ヨーヨーと聞いて思い出すのは、1970年代に一大ブームを巻き起こしたコカ・コーラなどのロゴがついたヨーヨー。「犬の散歩」「ブランコ」などといった一人技ができたらちょっとした人気者に。1990年代にはハイパーヨーヨーも登場しましたね。実はこのヨーヨーの世界、私たちの予想をはるかに超えてどんどん進化しているんです!

 ヨーヨーの技で世界チャンピオンの座に上り詰めた長谷川貴彦さんに、その魅力を存分にお聞きします。まずは、優勝したのはいつですか?
 「2002年と2005年の2回です。今年も8月にフロリダ州で世界大会がありましたが、決勝で負けてしまいました。僕が出たのは音楽に合わせて技を競うフリースタイル競技で、そのうちAP(アーティスティックパフォーマンス)部門です」

 AP部門は、技術偏重ではなく芸術性も見ようというのが大きな特徴。2005年の大会では『ヨーヨー忍者』をテーマに、仲間と2人、ヨーヨーを武器に見立てて戦うパフォーマンスをして高く評価されたとのこと。
 「そもそもヨーヨーは海外で流行した遊び。だから日本人が海外に進出すれば外国人として注目されます。日本人であることのメリットを感じて十分に活かしたいですね」

 ヨーヨーに「ハマッた」のはいつからですか?
 「小学生の時からヨーヨーにハマりましたが、情報もあまりなかったし、当時は単純技の繰り返しのみでしたね」

 ヨーヨーの傍ら勉学にも勤しみ、大学の法学部に進んだ長谷川さんですが、転機は1997年、ヨーヨー世界チャンピオンのデールオリバー氏との出会いだったそうです。
 「としまえんのイベントに来日していたんです。僕は10年間、ヨーヨーをただ好きで遊びとしてやってきたけど、彼の魅せる『技』を見て悔しかった。ヨーヨーだけで生きている彼のオーラを目の当たりにしました」

 デールオリバー氏から「下を向く一人遊びから、顔を上げて人にパフォーマンスし、広める面白さを知った」長谷川さんは大学を卒業するまで、そのイベントを運営していた今の会社でアルバイトを始めました。一度は別の会社に就職したものの、結局ヨーヨーのように今の会社に戻ってきたというから、人生っておもしろいですね。

 就職後、「スケバン刑事」のDVDを見直したら会社のすぐそばの石神井公園がロケ地だったという、でき過ぎた偶然に鳥肌が立ったそうです。2006年には「スケバン刑事4」の映画化に際し、主演の松浦亜弥さんに長谷川さんがヨーヨーの指導にもあたりました。
 「ヨーヨーを続けて、つくづくよかったと思った瞬間です(笑)」



小さなヨーヨーから広がる
大きなコミュニケーション!


 ヨーヨーの技をちょっと見せていただくと、流れるようにスムーズで美しい、惚れ惚れしてしまう手さばきでした。長谷川さんに練習の場をたずねると、意外な答えが返ってきました。
 「地元の和田堀公園です。噴水がありましたが、ここの水が枯れているのがちょうどよくて。というのも、ひもから離れる技の練習などは落とすとコロコロと転がっていっちゃうんです。でも噴水の枠にぶつかって止まってくれるから、どこまでも追いかけなくてすみました(笑)」

 今はヨーヨーのイベント出演や販売促進など、ヨーヨーに関するあらゆることを手がける毎日。石神井公園のおもちゃ屋「大成堂」の店頭で、午後3時半から約2時間、ヨーヨー教室も開いているそうです。

 「昔は僕も親から大成堂でおもちゃを買ってもらい、石神井公園で遊んだ身。それが巡り巡ってここで仕事させてもらえるなんてうれしいかぎりです。子どもが年上のお兄ちゃんから何かを教わる機会なんて今はそうそうないから、ちょっと世代間交流の場になればいいかな」と。

 最後に、ヨーヨー上達のコツを教えてください。
 「一人でやるより友だちと教え合い、互いに競うことが大切です。ヨーヨーは、初めての人も、昔やっていた人も同じように楽しめるもの。男の子が多いけど、女の子ももっと入ってきてほしいな。ヨーヨーを通じてどんどんコミュニケーションの輪が広がっていけばいいですね」

 年に2回、石神井公園野外ステージのイベントも毎回盛り上がってます。次回は2009年10月24日(雨天中止)。遊びからパフォーマンスに進化したヨーヨー、そして世界チャンプの技を見に出かけてみませんか。

(2009年10月1日更新)


世界大会の様子(2009年8月)
(長谷川さん写真提供)


1999年には2つのヨーヨーを
1つの手で操る世界最高難度
「ソロハム」を完成させた!


ヨーヨーのメンテナンス。
自分仕様に微細な調整をする。
(長谷川さん写真提供)


見よ、このジャンプ!
ヨーヨーがスケボーのよう!?
(長谷川さん写真提供)


ヨーヨーの世界チャンプ
「TAKA」を育てた(?)
和田堀公園の噴水


コロンビアにて
(長谷川さん写真提供)


インドネシアにて
(長谷川さん写真提供)


SGカップ2008 初夏
石神井公園野外ステージ
(スピンギア写真提供)


ベッドルームの壁一面には
世界のヨーヨーコレクションが…。
夢はヨーヨー博物館を開くこと!
(長谷川さん写真提供)


ヨーヨーの話をするときの、
このうれしそうな表情(笑)。
ヨーヨー以外のことを考える時間が
もったいない、と言い切りましたぞ!

プロフィール

長谷川 貴彦さん

長谷川 貴彦さん

1975年生まれ。小学生からヨーヨーを始めたが単純技の繰り返しのみ。1997年にデールオリバー氏と出会い、ヨーヨーに『再会』して一気にのめり込む。大学(法学部)の卒論はヨーヨー(笑)、卒業後は一般企業に就職するも1ヶ月で退社し、F1とヨーヨーを取り扱う練馬区内にある株式会社ディップスに入社。店長としてヨーヨーのオンラインショップ「スピンギア」を立ち上げる。2002年と2005年にAP部門で世界チャンピオン。好きな場所は子ども時代からかかわりの深い石神井公園と、おもちゃの「大成堂」!

株式会社ディップス
ヨーヨーショップ「スピンギア」/TD>

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