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#031 氷川神社氏子
風祭 茂さん

3年に1度の「鶴の舞」
舞の芸歴は70年以上!


 毎年4月に春祭りが行われる氷川神社では、子孫繁栄、五穀豊穣を祈願する「鶴の舞」と「神輿渡御」が、3年に1度行われます。どちらも練馬区の無形民俗文化財に指定されています。今年はちょうどその年にあたり、お祭りに先立ち、氏子として長年携わっていらっしゃる風祭茂さんと、そのお仲間をたずねました。

 風祭さんは今年の12月に米寿を迎えられるそうですが、スッと背筋が伸び、最長老とは思えないかくしゃくとした方! 16歳から氏子として祭りに参加し、舞の芸歴70年以上になります。 

 まずは、「神輿渡御」について教えてください。
 「『神輿渡御』は、ご神体を乗せた神輿が氷川神社発祥の地とされる「お浜井戸」まで『お里帰り』する行事です。紋付羽織袴に身を包んだ風祭さんら宮宿(みやじく)十数名を筆頭に、若者から長老まで総勢80人近くの行列で、道中歌を歌いながら石神井川沿いに練り歩きます。『さかきばんや…』で始まる歌なのだけど、5首の歌詞が通過する場所によって決まっているんです。だから帰りは逆の順番で歌うんですよ」

 「鶴の舞」はどこで、どんなふうに舞うのですか。
 「お浜井戸に到着したときに行います。今は私に代わって小林さんが雄鶴、豊島さんが雌鶴の役で鶴の舞を舞います。和紙でできた鶴の冠をかぶっているから頭が重いし、履物は下駄なので足許はフラフラ。羽織の裾を両手で持ち上げてパタパタさせ、最後は交尾のしぐさをします。子孫繁栄ということですね」



何も資料が残っていない…!?
「鶴の舞」継承のきっかけ


 道中歌は難しい歌詞ですが文字に残すと「目がつぶれる」と言われ、これまで口承で伝えられてきたそうです。さすがにそれでは途絶えたり変わったりしてしまうかも…と危惧した篠さんが「ええい、目がつぶれてもいいや!」と、意を決して書き起こしたそうです。

 何も資料が残っていない…と言うなかで見せてくれたのが1冊のパンフレット。平成4年、「民俗芸能inとしま」というイベントの時のもので、鶴の舞が紹介されてます。
 「このイベントがきっかけで、方々から取材を受けるようになりました。これまで資料を残していなかったので、少しずつ整理して記録するようになったんです。私は引退するので、こういうものを残しておかないとね」

 道中歌のさわりを披露してくれた風祭さん。声の通りとノビの良さに驚いていると、「趣味はカラオケ。いつも咽を鍛えています(笑)。演歌のね、新曲をいち早く歌うのが好きなんだ」

お気に入りのお店は?
 「歌える店か、女の子のいるお店がいいね(笑)。池袋は庭のようなもので、区内だと江古田の『19番ホール』によく行くね」若かりし頃、綺麗どころをはべらせて華やかな宴会を繰り広げていたそうですが、そのお元気はまだまだご健在のようです! お仲間にも趣味をお聞きしました。

豊島さん「庭の湯が好き。花を愛でながらの露天風呂はいいですね。もちろんカラオケも好きですよ。先日も風祭さんと行ったばかりです(笑)」

篠さん「昔、じいさんと一緒に行ったカタクリで有名な『清水山憩いの森』です。今では子どもと一緒に行くこともありますよ」

風祭(喜久夫)さん「2日に1度はウォーキングで出かける城北中央公園。季節感を感じながら歩いてます」

 好対照の清らかなコメントをいただきました(笑)。この清濁!?併せ持つチームワークの良さが、長期に渡りお祭りを成功させてきた地元の力となっているのでしょう。
 「このメンバーは、もう私があれしろこれしろと言わなくても、分かって動いてくれるから安心して任せられます。氏子として氷川神社に寄与したい、古いものを後世に残したいという思いで、これからも鶴の舞を守っていきます」

 4月12日のお祭りは、樫の木でできた重厚な神輿も見もの。鶴の舞は、静かに行われる短い舞なので、どうぞお見逃しなく!

(2009年4月1日更新)


「鶴の舞」の様子(お浜井戸にて)
鶴の冠に赤い帯がついているのが
雌鶴の目印です。


神輿渡御の道中歌を歌う様子。


宮宿に続く白装束の方は、
「白鳥」と呼ばれています。


気心の知れた仲間が集まれば、
すぐにその場は笑いに包まれます。


ほがらかに、鶴の舞秘話を
聞かせてくださる豊島力さん。


道中歌の歌詞を起こした
勇気ある!? 篠 稔さん。


ソフトな語り口調の風祭喜久夫さん


道中歌を歌う風祭茂さん


樫の木で作られた、
華やかで重厚な神輿。
手前には雌雄の鶴の冠が
置かれています。

プロフィール

風祭 茂さん

風祭 茂さん

大正12年12月12日、練馬区氷川台出身の87才。地元氷川神社の氏子として16歳から鶴の舞奉納に携わり、祭りの中心的役割を果たす。趣味はカラオケ。演歌でも必ず新曲を仕入れるチャレンジ精神の持ち主。

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