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#021 「劇団角笛」代表
白石 武士さん

影絵一筋!
「劇団角笛」は今年45周年


 『劇団角笛』は豊玉南に事務所を構え、国内でも数少ない影絵人形劇を専門とした劇団。毎年恒例の夏休み公演が、有楽町朝日ホール(マリオン11F)で7月20日(日)~23日(水)に、「ないた赤おに」と「花さかじいさん」「つのぶえのうた」の3本立てで行われます。今年は劇団創立45周年という節目の年でもあり、これまでの歩みをたどりながら、代表の白石武士さんにお話をうかがいました。

「劇団を旗揚げしたのは、今は亡き父です。父は若いころ福岡から東京に出てきて、芝居の勉強をし、舞台美術を志していました。そんな矢先、病気になり故郷で療養生活を送ることに。そこの病院を退院する方に何かプレゼントを、と思って考えついたのが『影絵』でした。病院ですからスクリーンは白いシーツで、セットと人形は厚紙でできたレントゲンのフィルムケースを解体して作ったそうです。紙自体は汚れてボロボロでも、影で映す分には問題ないでしょう(笑)」
 ご自身も病にかかりながら、退院の方を喜ばせてあげようとは、とても心の広い方だったんですね。

 戦後間もない日本は物資が不足し、人々の生活も厳しい時代。ともすれば大人たちの心はすさみがちでしたから、病院での上映会は、大変な感動を呼び起こしたとか。
「大人の気持ちは子どもに伝わりますから、豊かな心を! という正義感に近い思いがあったみたいで。その後、再び上京し『劇団角笛』が1963年に誕生します」



将来を担う子どもたちに
最高のモノを伝えていきたい


 白石さんはひとりっ子。子どもの頃から父親の仕事を見ていて、自然な流れで継いだのかと思っていたら…!? 一度は会社勤めをされたとのこと。

「海外の方が日本といって思い浮かべるのは、企業や物の知名度が先行しているように思います。私は工学部の出身で就職をしたのですが、どんなに優れた機械を作っても100%故障しない物はまずありません。ならば、人間が作って演じる影絵で、より完成度の高いモノを目指したい、心に響くような文化を伝えたい、モノ作りをしたい…という気持ちで影絵の世界へ入っていきました」

 あくまでも手作りにこだわる白石さん。事務所の裏手にあるアトリエに案内していただくと…、ベニヤ板を電動糸ノコでカットしたり、彩色部分のセルロイドを貼る作業場でした。人形作りも劇団員の大切な仕事。2階の1室には大きな白いスクリーンがあり、向かい合わせて照明が配備。ちょっと人形を持たせていただきましたが、結構重いんです。これを持ちながら、しなやかな動きを出すのって大変な技と体力が必要です。


「ないた赤おに」を持つ劇団員・
人形チーフの吉田由紀恵さん。


「影絵は幻想的といわれるように、白と黒のコントラストに光を介して、にじんでいく色が特徴です。この美しさは絵の具はもちろん、他のものでも表現しがたいでしょう。そして、影絵を演じる側の大きな魅力は、同時に観客も体験できるということなんです。普通の芝居だと、役者さんは自分の演技や芝居全体は、モニターなどを介さなければ見られないわけですから」
 なるほど~! 演じると同時に観客にもなれ、お客さまの反応もその場で体感できるって、すごいことですね。楽しくもあり、厳しくもあり。

 今まで日本全国はもちろん、フランス、香港、韓国、中東、東南アジアと公演してきて、子どもたちの熱い歓声に励まされたといいます。感想を絵にしてくる子もいて、こんなエピソードも。
「影絵劇では“黒”で見ていた部分にも、幼い子は着色してくる子が多いんですよ。現実的な色遣いの子もいれば、創造的な色を使う子もいて(笑)。子どもなりの感じ方、とらえ方の違いがあっておもしろいなあと思います」

 子どもの話になると一段と穏やかさが増す白石さんは、家に帰ると3人の子どもの父親。練馬に住んで40年になるそうですが、お気に入りの場所をお聞きすると、
「練馬には好きな場所が多くて、迷ってしまいますが…。一か所あげるなら『グラントハイツ』ですね。光が丘が、まだ米軍の居住地区だったころ。私は小学校3年生くらいだったので、サクの向こう側に外国があるかと思うと、入ってみたくて興味しんしんでした。憧れの地でしたよ」

 今年も劇団員とともに全国各地へ。白石さんは光と陰で芸術作品を作り出すアーティストであると同時に、影絵の伝道師でもあるのです。影絵を通して心あたたまるお話を、末長く多くの子どもたちに伝えていってください。


(2008年6月2日更新)



2008年の夏休み公演チラシ


角笛のマスコットぼうや・
クックちゃんは
3世代を通して愛されています。


稽古場にあるスクリーン、
大きいですね~。


背景に使用するもの。
ライトからの距離でボカシ具合が
変わります。


「花さき山」のワンシーン。
こんな美しい映像を
その場で表現するなんて!
影絵劇は子どもから大人まで
楽しめます。


舞台裏です。
立て膝や中腰をキープするのは、
かなりハード!
劇団員の皆さんは
日頃から鍛えています。


人形の首・手・足の関節を巧みに
動かしながら、自然な動きを表現。
さすが!


奥様の白石奈美さんも
劇団員として、
熱いハートを持っています!



プロフィール

白石 武士さん

白石 武士さん

「劇団角笛」の2代目代表。区内在住。「角笛シルエット劇場」の名称で、年間約150公演で全国各地をまわる。これまで国内外から高い評価を受け、東京都優秀児童演劇選定優秀賞など数々の受賞歴を持つ。

劇団角笛事務所
TEL.03-3994-7624
http://www.tsunobue.co.jp/

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