#014 練馬区文化財保護推進員
鈴木 義範さん
公開:2007.11.01
多忙を極める
週刊誌記者から一転!
11月3日から11日まで、「東京文化財ウィーク2007」として、都内全域で国や東京都指定の文化財を集中的に公開するイベントが多く開催されます。そこで、練馬のすばらしい文化財をより多くの人に見てほしいと活動していらっしゃる練馬区文化財保護推進員・鈴木義範さんをたずねました。
石神井図書館内の郷土資料室の膨大な史料を背に、おだやかな物腰で私たちを迎えてくださった鈴木さんは、もと総合週刊誌の敏腕記者!
「将棋が好きだった縁から、総合週刊誌で主に将棋関連の記事を取材し、連載を担当していました。今でも忘れられないのは、平成8年の第45期王将戦7番勝負で羽生善治六冠が谷川浩司王将に勝ち、前人未到の七冠完全制覇を成し遂げた一局です。私も山口県まで行き、盤側で内藤國雄九段と取材しました。締め切りが翌朝だというので、徹夜して必死で書き上げましたよ。そういう意味でも非常に感慨深いですね」
「わがまち再発見」に全力投球
そんな多忙をきわめる鈴木さんが区の文化財保護活動に携わるようになったのは、平成17年からといいます。
「平成16年に教育委員会から委嘱されてのことです。東京都主催の文化財公開事業は、2つの柱がありましてね。一つは公開事業、もう一つの柱は企画事業です。10月1日から11月31日まで行われる予定で、練馬区では石神井城跡巡りと発掘パネル展などがメインです」
その中で鈴木さんの役割は?
「『わがまち再発見』と題した史跡散歩で11月8日に、私は地元・関町北の本立寺を起点としたコースのガイドをします。春・秋と年2回ほど企画しましたが、史跡めぐりはいつも新しい発見がありますね」
なんと、このツアーは企画から運営にいたるまでボランティアによって行われているそう。
「コース決めから配布資料作製まで、すべて自分たちでします。資料については間違いがあるといけないので、学芸員のチェックも受けます。実施に先立ち、コースを2、3回は下見するんですよ」
すばらしい念の入れように、参加する側としては感謝するばかりですが、大変でしょうね?
「春と秋の企画ですから、1回につき4~5か月かかるとすると1年がかりの仕事になります。私たちはいつでも参加者の皆さんの体調不良や交通事故を心配していますので、最後に喜んでいただくためにはアクシデントに配慮する慎重さが大切なんです」
何がそれほどまでに鈴木さんをつき動かしているのでしょう?
「私たちがいま暮らしている練馬には、連綿と続いた人々の生活があったわけです。その小さな営みの積み重ね…庶民史を探り発掘することは、先達の現代人へのメッセージを感知することだと思います。そして、それを次の世代に伝えることが私たちの責務ではないかと」
若い世代に、自分たちの暮らしのルーツに関心をもってもらうのは難しいことですね。
「確かに史跡散歩の参加希望者は圧倒的に中高年が多いですね。でも中には学生さんが熱心に質問してくれたりすることもあります。手前味噌ですが、昨年夏“62の手習い”で学芸員の資格を取ったときの講義でも今後はいかにして若い世代に民俗や文化財に関心をもってもらい、人を集めるかが重要だと教わりました」
地元で子をはぐくみ、
歴史をはぐくみ
鈴木さんが練馬区関町に暮らして40年弱になります。
「自宅そばを流れている千川上水は、越してきた当時は空堀でね、私の子どもたちの格好の遊び場でした。それが平成元年3月に東京都の清流復活事業により流れが甦ると知ったときはうれしかったですね。住んでいる所にはいろいろと関心があり、マウンテンバイクで周囲の石造物や樹木の生態を調べたりもしましたよ。私もこの地で子どもを3人育みましたからね」
練馬でいちばん好きな場所は?
「もちろん千川上水です!」と即答でした(笑)。千川上水の四季をデジカメに収め、お手製のポストカードをつくるなど、その地への愛着にはひとかたならぬものがあります。平成8年からは関町で区民農園も始めたとか。最後に一言。
「これは手前味噌でなく(笑)、練馬区の史跡散歩のレベルはかなり高いと自信をもって言えます。40名ものボランティアが雨でも雪でも会議となれば駆けつける。無償の行為がこの企画の支えになっているんです。時代とともに形態は変わるかもしれませんが、これからも皆さんに文化財のすばらしさをお伝えしていきたいですね」
鈴木さんたちが「育てた」史跡散歩、参加するのが楽しみです。
週刊誌記者から一転!
11月3日から11日まで、「東京文化財ウィーク2007」として、都内全域で国や東京都指定の文化財を集中的に公開するイベントが多く開催されます。そこで、練馬のすばらしい文化財をより多くの人に見てほしいと活動していらっしゃる練馬区文化財保護推進員・鈴木義範さんをたずねました。
石神井図書館内の郷土資料室の膨大な史料を背に、おだやかな物腰で私たちを迎えてくださった鈴木さんは、もと総合週刊誌の敏腕記者!
「将棋が好きだった縁から、総合週刊誌で主に将棋関連の記事を取材し、連載を担当していました。今でも忘れられないのは、平成8年の第45期王将戦7番勝負で羽生善治六冠が谷川浩司王将に勝ち、前人未到の七冠完全制覇を成し遂げた一局です。私も山口県まで行き、盤側で内藤國雄九段と取材しました。締め切りが翌朝だというので、徹夜して必死で書き上げましたよ。そういう意味でも非常に感慨深いですね」
「わがまち再発見」に全力投球
そんな多忙をきわめる鈴木さんが区の文化財保護活動に携わるようになったのは、平成17年からといいます。
「平成16年に教育委員会から委嘱されてのことです。東京都主催の文化財公開事業は、2つの柱がありましてね。一つは公開事業、もう一つの柱は企画事業です。10月1日から11月31日まで行われる予定で、練馬区では石神井城跡巡りと発掘パネル展などがメインです」
その中で鈴木さんの役割は?
「『わがまち再発見』と題した史跡散歩で11月8日に、私は地元・関町北の本立寺を起点としたコースのガイドをします。春・秋と年2回ほど企画しましたが、史跡めぐりはいつも新しい発見がありますね」
なんと、このツアーは企画から運営にいたるまでボランティアによって行われているそう。
「コース決めから配布資料作製まで、すべて自分たちでします。資料については間違いがあるといけないので、学芸員のチェックも受けます。実施に先立ち、コースを2、3回は下見するんですよ」
すばらしい念の入れように、参加する側としては感謝するばかりですが、大変でしょうね?
「春と秋の企画ですから、1回につき4~5か月かかるとすると1年がかりの仕事になります。私たちはいつでも参加者の皆さんの体調不良や交通事故を心配していますので、最後に喜んでいただくためにはアクシデントに配慮する慎重さが大切なんです」
何がそれほどまでに鈴木さんをつき動かしているのでしょう?
「私たちがいま暮らしている練馬には、連綿と続いた人々の生活があったわけです。その小さな営みの積み重ね…庶民史を探り発掘することは、先達の現代人へのメッセージを感知することだと思います。そして、それを次の世代に伝えることが私たちの責務ではないかと」
若い世代に、自分たちの暮らしのルーツに関心をもってもらうのは難しいことですね。
「確かに史跡散歩の参加希望者は圧倒的に中高年が多いですね。でも中には学生さんが熱心に質問してくれたりすることもあります。手前味噌ですが、昨年夏“62の手習い”で学芸員の資格を取ったときの講義でも今後はいかにして若い世代に民俗や文化財に関心をもってもらい、人を集めるかが重要だと教わりました」
地元で子をはぐくみ、
歴史をはぐくみ
鈴木さんが練馬区関町に暮らして40年弱になります。
「自宅そばを流れている千川上水は、越してきた当時は空堀でね、私の子どもたちの格好の遊び場でした。それが平成元年3月に東京都の清流復活事業により流れが甦ると知ったときはうれしかったですね。住んでいる所にはいろいろと関心があり、マウンテンバイクで周囲の石造物や樹木の生態を調べたりもしましたよ。私もこの地で子どもを3人育みましたからね」
練馬でいちばん好きな場所は?
「もちろん千川上水です!」と即答でした(笑)。千川上水の四季をデジカメに収め、お手製のポストカードをつくるなど、その地への愛着にはひとかたならぬものがあります。平成8年からは関町で区民農園も始めたとか。最後に一言。
「これは手前味噌でなく(笑)、練馬区の史跡散歩のレベルはかなり高いと自信をもって言えます。40名ものボランティアが雨でも雪でも会議となれば駆けつける。無償の行為がこの企画の支えになっているんです。時代とともに形態は変わるかもしれませんが、これからも皆さんに文化財のすばらしさをお伝えしていきたいですね」
鈴木さんたちが「育てた」史跡散歩、参加するのが楽しみです。
(2007年11月1日更新)
数種類ある広告のひとつ、
総合運動場と
すずしろステージのプログラム
文化財保護推進員として
担当地域を定期的に
巡回しています(竹下稲荷神社)
羽生七冠達成を取材で立ち会った(1996年2月13日・山口県豊浦町)
「史跡散歩」の打ち合わせ光景
(郷土資料室)
「史跡散歩」の光景
(2007年春・千川上水)
「史跡散歩」でマイクを持って 解説する鈴木さん
区民農園でトマトの収穫。
うれしそうな笑顔!
1944年福島県出身。
練馬区文化財保護推進員。総合週刊誌記者を経てフリージャーナリスト。
2006年博物館学芸員の資格を取得。
著書に『情報べんり帳』(講談社辞典局 1999年5月刊)がある。
趣味は将棋と家庭農園。
練馬区文化財保護推進員。総合週刊誌記者を経てフリージャーナリスト。
2006年博物館学芸員の資格を取得。
著書に『情報べんり帳』(講談社辞典局 1999年5月刊)がある。
趣味は将棋と家庭農園。