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#011練馬アニメーション協議会代表幹事
光延青児さん

練馬はアニメのふるさと!
練馬アニメーション協議会
発足の背景

 練馬区は日本の長編アニメーション発祥の地です。その誕生から今年は50年であり、練馬区独立60周年という記念すべき年! 8月1日~5日に「ねりたんアニメカーニバル」が開かれます。イベントに先立ち、練馬アニメーション協議会の代表幹事を務める、スタジオ雲雀の光延青児社長をたずねました。

 練馬駅からほど近い新しい自社ビル、オフィスに入ると大勢のクリエーターたちの活気がピンと伝わってきます。開口一番「練馬区はアニメのふるさとなんですよ」と光延さん。その所以とは…。

 東映が『東洋のディズニー』を目指して、大泉の撮影所でアニメの制作を始めたのが原点。1958年に「白蛇伝」が完成し、それを見た手塚治虫さんが自分の作品もアニメで作りたいと、富士見台に虫プロダクションを立ち上げたのが1962年。翌年には日本初のテレビシリーズ「鉄腕アトム」が放映されました。日本のアニメの双璧ともいえる撮影所が、約50年前から大泉と富士見台にあると聞けば、"練馬はアニメのふるさと"に納得ですね!

 現在も区内には90社を超えるアニメ関連会社がある日本最大の集積地で、原作者や漫画家が多数住んでいます。2004年7月、区内のアニメ事業者52社が集まり、練馬アニメーション協議会が発足しました。光延社長をリーダーとして練馬発アニメが区内外はもちろん、世界へ動き出しています。



アヌシーで手ごたえあり!
ねりたんアニメカーニバル開催

 去る6月にフランス南部の水の都・アヌシーで「アヌシー国際アニメ見本市」が開催され、日本のアニメーションが高い評価を得たそうです。

「もともとカンヌ国際映画祭のアニメーション部門が独立したもので、世界のアニメフェスティバルとしては最大規模です。今回、EU諸国はもちろん、アルゼンチンやロシアなど8カ国が出展しました。映画祭とは別に商談会があって、40~50社に及ぶ企業との面談は、3日間朝から晩までびっしり。私たちの作品『鉄人パパ』の評判がとてもよく、手ごたえを感じました。実はこの商業ベースの祭典に、日本から参加したのは練馬区だけなんです」と光延社長。

 練馬からアニメーション文化を発信したい―という思いがつまった「ねりたんアニメカーニバル」の開催にあたり、練馬アニメーション協議会の梶川事務局長に内容をお聞きしました。

「漫画家の松本零士さん、ちばてつやさん、それから鉄腕アトム役の清水マリさんなどをゲストに迎え、練馬区へのメッセージを送っていただく予定です。お子さん向けには、人気キャラクターショーなど。練馬区60周年&アニメ50年の歩みをパネル化して、歴史展として公開します。セル画や台本なども展示し、年齢を超えて皆さんに懐かしさと共に楽しんでいただきたいですね」



ニュートラルな視点から
アニメへの愛がにじむ


 生まれも育ちも、練馬区大泉という光延さん。子どもの頃、朝5時起きして自転車をこぎ、石神井公園の三宝寺池でザリガニを釣ったのが印象深い思い出とか。

 ご両親はアニメーション制作者ということで、幼い頃からこの世界を目指していたのでしょうか?
「アニメーションは好きじゃありません(笑)」と、クールな一言。「現場で苦労する両親の姿を見てきたから、大変さはよく分かっていました。これはやるもんじゃないなと(笑)」

 光延さんが大学生の時に、お父様が病気で倒れ現場から離れることに…。光延さんは突然、社長を任されることになったそうです。
「アニメの制作は、非常に緻密で地道な作業。進行が遅れて間に合わないとなれば、自分でも当然徹夜してセル画の色を塗っていました。とにかく必死でしたね」
 一方、アニメ好きでもオタクでもなかった分、冷静に判断できた面も。「工程の中で閉塞感を感じていた時期に、セル画からデジタルへの転換期にいち早く取り組めました。10年前になりますが、あっという間でしたね」

 日本のアニメーションについてたずねると、
「ジダンなどフランスのサッカー選手には、『キャプテン翼』を見て育った人もたくさんいます。日本のアニメーションは、人生を左右するほどの影響力があるんです」と。さらに「ディズニーなどのフル・アニメーションに対して、テレビ放映上のコマ数を制限して表現するリミテッド・アニメーションが日本独自の技術を高めていきました。1秒24コマに24枚の絵を描きますが、それを3コマごとに縮めて、1秒間に8枚の絵を描き、効率よく絵を切り替えていく手法は知恵を絞ります。もともと、浮世絵や版画などデフォルメするセンスは日本人ならではの感性ですね」

 いやはや光延さん、間違いなくアニメーションを愛していると思います!(笑)

(2007年7月25日更新)



水の都、アヌシー

アヌシー国際アニメ見本市の様子

練馬区の街灯アニメバナーも装飾 -アヌシー国際アニメ見本市で-



梶川正晴事務局長(写真右)

プロフィール

光延青児さん

光延青児さん

アニメ制作会社の株式会社スタジオ雲雀 代表取締役社長。2004年に発足した練馬アニメーション協議会代表幹事。若き社長ですが語り口はおだやかで貫禄が漂う。アニメにかける思いは熱く、ちょっぴりユーモラスな方。

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