特集記事 Reviews
#009 メゾ・ソプラノ歌手
巖淵真理(いわぶちまり)さん
帰国後、初めての大舞台
満席のIMAホールで歌う
イタリア留学の経験があるせいか、身振り手振りも大きく、目が生き生きとして、特長ある発音の真理さん。ちょっと話すだけで不思議と周囲が明るくなる。そんなあふれ出るオーラを持った人。
光が丘IMAホール20周年記念として、5月20日(日)に「東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団演奏会 あなたの夢かなえます《オーケストラと夢の共演》」が開催されました。オーディションで選ばれた地元在住の音楽家3名が、フルオーケストラと共演! その中で真理さんはトリを務めました。
舞台に登場した真理さんは、デコルテの白いドレスを着こなし、優雅で風格さえあります。曲は、マスカーニ:《カヴァレリア・ルスティカーナ》~「ママも知るとおり」。婚約者の不倫を知ったサントゥッツァという女性が、婚約者の母に苦しい胸のうちを告白するというショッキングな内容。女性の不安と苦しみ、嫉妬や怒り、絶望から願いへと感情の移り変わりを表現しながら丁寧に歌いあげた。招待客で満席のIMAホールをわかせ、素晴らしいコンサートでした。
「睡眠を多くとると声帯にいいので昨日は早く寝たのですが、帰国してから初めての大舞台だったので、明け方何度も目が覚めてしまいました」 公演を終えた真理さんは、楽屋でリラックスした表情に。
居眠りしながらピアノを弾く特技!
大学院で好きだった歌に転向
真理さんの経歴は、国立音楽大学附属小・中学校・高校を経て同大学のピアノ科を卒業とあります。
「父がピアニスト志望で20才まで続けていましたが、家の事情で断念した過去があります。私は5才から父にピアノを習い始め、練習しないと怒られます。厳しかったですね。1年後から先生に付いて習い、家での練習は最低3時間と決められていました」
やめたいと思ったことは? 「正直、何度かやめたいと思ったことはあります。でも、中学に入ったら音楽学校特有のふわっとした雰囲気に染まってしまって。自営業の父に練習しないとバレてしまうので、居眠りしながらでも指が動いてピアノを弾くという特技が身についてしまいました(笑)」
そんなピアノ三昧の真理さんが歌の世界にふれたのは、中学生の時に個人レッスンの先生に勧められて。ピアノを弾く技術だけでなく、音楽性や表現力をもっと豊かにするために歌を習ったという。いい声が出ると先生からも誉められ、歌の転向を勧める人もありました。でも真理さんが選んだのは大学までずっとピアノ科。 「私は一人っ子ですし、父の期待に応えたかったんです。ピアノ科卒業の目標しか見えてませんでした」
大学の就職活動で、音楽教室の講師の二次面接で落ちてしまった真理さん。同じころ、全日本学生音楽コンクールに歌で出場し、本選で10人の中に選ばれたことが転機に。 「小さい時からきっと…歌が好きだったんです。大学院から歌の世界に入りました」 そこから真理さんの環境は大きく動き出します。
観客の方と一体感を持てるような
舞台を作りあげていきたい
土支田生まれの土支田育ちの真理さん、好きな場所は緑の多い光が丘公園というけど、実はレッスンの通い道として通過したことがある程度。身体が弱かったせいもあるけど、音楽漬けの毎日で泥遊びはもちろん散歩の経験すらないそうです。レッスンはお父様が送り迎えというお嬢様生活から一変、いきなり海外一人暮らしが始まったのです。
文化庁芸術家在外派遣研修員として2002年12月から4年間、イタリア・ジェノバに留学。言葉もできない、自炊をしたことがない、バスの乗り方もわからない、ないないづくめ。 「追い込まれるとなんとか力が出るもので、3か月位で大家さんと会話ができるようになりました」 真理さんの屈託のない明るさは世界でも通じるのでしょう。
タウン誌の月刊Kacceに2004年8月号から2005年3月号まで『ジェノバ日記』という連載があり、日常の中でふれ合う人に声をかけて元気に過ごす様子が、笑顔の写真付きで綴られています。
さて、真理さんの今後の展望は? 「日本をベースに活動していきますが、今年8月にトロヴァトーレのジプシー役アズチェーナで全幕出演の舞台が決まっているのでジェノバに行きます。歌はプラスもマイナスもメンタリティに大きく作用されてしまうもの。今年1月に最愛の父を亡くしたのですが、看病をしていた時期は本当に声が出なくなってしまいました。今は歌えることに感謝する気持ちでいっぱい、舞台が以前より楽しくなりました。音楽をしていると父と一緒にいるようで、守られているようで。観客の方と歌を通して一体感を持てるような舞台を作りあげていきたいと思います」
お父様から導かれた音楽の道は、真理さんからまた無限に広がっていきます。
満席のIMAホールで歌う
イタリア留学の経験があるせいか、身振り手振りも大きく、目が生き生きとして、特長ある発音の真理さん。ちょっと話すだけで不思議と周囲が明るくなる。そんなあふれ出るオーラを持った人。
光が丘IMAホール20周年記念として、5月20日(日)に「東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団演奏会 あなたの夢かなえます《オーケストラと夢の共演》」が開催されました。オーディションで選ばれた地元在住の音楽家3名が、フルオーケストラと共演! その中で真理さんはトリを務めました。
舞台に登場した真理さんは、デコルテの白いドレスを着こなし、優雅で風格さえあります。曲は、マスカーニ:《カヴァレリア・ルスティカーナ》~「ママも知るとおり」。婚約者の不倫を知ったサントゥッツァという女性が、婚約者の母に苦しい胸のうちを告白するというショッキングな内容。女性の不安と苦しみ、嫉妬や怒り、絶望から願いへと感情の移り変わりを表現しながら丁寧に歌いあげた。招待客で満席のIMAホールをわかせ、素晴らしいコンサートでした。
「睡眠を多くとると声帯にいいので昨日は早く寝たのですが、帰国してから初めての大舞台だったので、明け方何度も目が覚めてしまいました」 公演を終えた真理さんは、楽屋でリラックスした表情に。
居眠りしながらピアノを弾く特技!
大学院で好きだった歌に転向
真理さんの経歴は、国立音楽大学附属小・中学校・高校を経て同大学のピアノ科を卒業とあります。
「父がピアニスト志望で20才まで続けていましたが、家の事情で断念した過去があります。私は5才から父にピアノを習い始め、練習しないと怒られます。厳しかったですね。1年後から先生に付いて習い、家での練習は最低3時間と決められていました」
やめたいと思ったことは? 「正直、何度かやめたいと思ったことはあります。でも、中学に入ったら音楽学校特有のふわっとした雰囲気に染まってしまって。自営業の父に練習しないとバレてしまうので、居眠りしながらでも指が動いてピアノを弾くという特技が身についてしまいました(笑)」
そんなピアノ三昧の真理さんが歌の世界にふれたのは、中学生の時に個人レッスンの先生に勧められて。ピアノを弾く技術だけでなく、音楽性や表現力をもっと豊かにするために歌を習ったという。いい声が出ると先生からも誉められ、歌の転向を勧める人もありました。でも真理さんが選んだのは大学までずっとピアノ科。 「私は一人っ子ですし、父の期待に応えたかったんです。ピアノ科卒業の目標しか見えてませんでした」
大学の就職活動で、音楽教室の講師の二次面接で落ちてしまった真理さん。同じころ、全日本学生音楽コンクールに歌で出場し、本選で10人の中に選ばれたことが転機に。 「小さい時からきっと…歌が好きだったんです。大学院から歌の世界に入りました」 そこから真理さんの環境は大きく動き出します。
観客の方と一体感を持てるような
舞台を作りあげていきたい
土支田生まれの土支田育ちの真理さん、好きな場所は緑の多い光が丘公園というけど、実はレッスンの通い道として通過したことがある程度。身体が弱かったせいもあるけど、音楽漬けの毎日で泥遊びはもちろん散歩の経験すらないそうです。レッスンはお父様が送り迎えというお嬢様生活から一変、いきなり海外一人暮らしが始まったのです。
文化庁芸術家在外派遣研修員として2002年12月から4年間、イタリア・ジェノバに留学。言葉もできない、自炊をしたことがない、バスの乗り方もわからない、ないないづくめ。 「追い込まれるとなんとか力が出るもので、3か月位で大家さんと会話ができるようになりました」 真理さんの屈託のない明るさは世界でも通じるのでしょう。
タウン誌の月刊Kacceに2004年8月号から2005年3月号まで『ジェノバ日記』という連載があり、日常の中でふれ合う人に声をかけて元気に過ごす様子が、笑顔の写真付きで綴られています。
さて、真理さんの今後の展望は? 「日本をベースに活動していきますが、今年8月にトロヴァトーレのジプシー役アズチェーナで全幕出演の舞台が決まっているのでジェノバに行きます。歌はプラスもマイナスもメンタリティに大きく作用されてしまうもの。今年1月に最愛の父を亡くしたのですが、看病をしていた時期は本当に声が出なくなってしまいました。今は歌えることに感謝する気持ちでいっぱい、舞台が以前より楽しくなりました。音楽をしていると父と一緒にいるようで、守られているようで。観客の方と歌を通して一体感を持てるような舞台を作りあげていきたいと思います」
お父様から導かれた音楽の道は、真理さんからまた無限に広がっていきます。
(2007年6月4日更新)
《オーケストラと夢の共演》の リハーサル風景
「ねりま・エコスタイルフェア」 真理さんの歌と表現力は、 "ブラボー!"
ジェノバ名物の ジェノベーゼを作りました! 「ジェノバ日記」より
プロカメラウーマンのジュリアさんと 偶然知り合って、 写真集にサインをいただきました。 「ジェノバ日記」より
人柄を映すような明るい笑顔!
プロフィール
巖淵真理(いわぶちまり)さん
練馬区土支田で生まれ育った真理さん。国立音楽大学ピアノ科卒業、同大学院オペラコース修了。新国立劇場オペラ研修所第1期修了。イタリアのジェノバで4年間留学、2006年末に帰国。現在、歌の指導もしています。二期会会員。