特集記事 Reviews
#001 「内田鰹節店」店主
内田正一さん
「そば打ち1日教室」の様子。そばつゆのダシのとり方から教えてくれる。
小僧10年、番頭10年、独立30年!
この仕事を選んでもうどれくらい? という問いに、パッと出てきたのがこの言葉。
「小僧10年、番頭10年、独立30年」。50年以上のキャリアを歯切れよく語る、まさに内田さんそのものです。
商業高校卒業後、就職先に悩んでいたとき、日本橋で鰹節店に勤めていた叔父の勧めで修業に入ったのが、この道に進む最初のきっかけだという内田さん。叔父の独立後も番頭として経験を積み、暖簾分けをしてもらい、昭和45年に練馬区北町へ。ハッスル通り商店街で鰹節店を構えた後、平成10年に旭町へ移転。それが現在の内田鰹節店です。
「もうね、この道ひと筋半世紀になっちゃった。鰹節は、和食になくてはならない素材だからこれからも廃れることはないと思うね。そういう意味では、『日本の食文化』の一端を担っているという誇りがあるよ。もちろん、これからも鰹節の卸しも小売も続けていきますよ、あくまでも専門店というこだわりをもってね」
と、一店一品主義を貫く内田さん、さすがです!
美味しいそばを伝えたい
内田鰹節店では予約制で毎週日曜日、「そば打ち1日教室」も開いています。この教室、他とはちょっと違います。そばの打ち方を教えるのはもちろんですが、その前に、まずそばつゆのダシのとり方から始まるのです。ダシの基本となる鰹節は種類も削り方も用途によってさまざま。
「そばばっかり美味しくてもねー、つゆも美味しくなくっちゃ」という内田さん。ダシのとり方、そばのゆで加減など、初心者にていねいに教えてくれます。覚えが悪くても、手元があやしくても、最後はちゃんと美味しくできるからご安心を! 試食と持ち帰りつきの、うれしい企画です。
「カツブシはね、グラグラ煮過ぎてもだめなの」「カツブシは…」「カツブシは…」。
鰹節を語らせたら、話が尽きることはありません(笑)。
商売に惚れ、家族に惚れ、
この町に惚れ
練馬でお気に入りの場所を尋ねると「光が丘公園!」と即答でした。武蔵野の雑木林を再現したこの公園はお店のすぐ目の前。ふらりと歩けばまるで深い森の中にいるような気分にさせてくれるそう。
ウォーキングや犬の散歩をする人々とすれ違うのは、内田さんの大切なリフレッシュのひと時です。この地をこよなく愛する内田さんのもう一つのおススメは、南蔵院通り近くにあるお蕎麦屋「のなか」さん(中村2-5-11)。そばはもちろん自家製粉。ざるそば・もりそばの区別なく、すべて「せいろ」を謳った正統派だと内田さんのお墨付き。さすがにダシの専門家だけあって、お店を見る目も確かです。
「商売に惚れ、家族に惚れ、この町に惚れ…」と、照れもせずさらりと言ってしまう内田さん、あたたかいご家族に見守られ、ますます絶好調です!
(2006年10月1日更新)
TBSラジオの生放送で賑わう店先
プロフィール
内田正一さん
日本橋人形町、下町生まれの75歳! 18歳で鰹節の世界に入り、練馬で店を構えて30年。文字通り「この道ひと筋50年!」と言う内田さん、仕事にゃ厳しいが、周りからは「おじさん」と慕われている。趣味はカラオケ。マイクを握れば北島三郎や村田英雄を大熱唱。鰹節に負けず「いい味」を出している。