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ねりま人#133 村本ちひろさん(イラストレーター)

公開:2025.05.16
著者:Art&旭

ねりま人#133 村本ちひろさん(イラストレーター)

<プロフィール>
大阪府富田林市出身、練馬区在住。透明水彩中心のやさしいタッチの絵を得意とし、商品パッケージ・書籍・テキスタイル・広告サイトなど、幅広い分野で活躍。特に動物や食べ物を描くのが好き。

 

▲レアな「練馬区お花見散歩まっぷ」の制作イラストを手ににっこり!

 毎年春先に練馬区内で配布を行う「練馬区お花見散歩まっぷ」のイラストを2022年から担当してくれている村本さんは、実は練馬区民!今回は、2025年4月20日(日)まで期間限定で開催していた個展「イラストレーター村本ちひろ 仕事作品展」の展示会場で、村本さんにお仕事についてや練馬区の印象など、たっぷりお話を伺ってきました!

絵のスタイルは驚きの独学

絵のスタイルは驚きの独学
▲個展会場には、額装やファイリングされた作品計93点が展示されていました!

 
――そもそもイラストレーターというお仕事を目指すきっかけは何だったのでしょうか?

村本:母が油絵教室に通っていたり、父が漫画を約1万冊集めていたりするような人だったので、幼少期から絵というものがそばにありました。自然と「自分でも描いてみたい」と思いはじめ、学生時代はサークルなどで絵を描いていました。

――幼少期からイラストレーターを目指していたんですか?

村本:それが、一度就職しているんです!志しては壁にぶつかり…という紆余曲折を繰り返していたんですが、夢をどうしても諦めることができず一念発起して東京に上京し、結果としてイラストレーターになることができました。

――夢を追いかけて上京されたんですね!

村本:東京のほうが出版社や広告代理店なども多いですしね!出会いもチャンスも多いんじゃないかなと思って。でも、最初からイラストレーターだったわけではないので、上京したものの「どうしたらいいんだろう…」と悩んでいました(笑)。

 

▲飲食店の新商品ポスターや教科書など、幅広い活躍がうかがえる作品を展示

 
 上京してすぐは働きながら仲間内の展覧会に参加したり、国内外の有名ファッションブランドやドラマの劇中イラストなどを手掛ける、著名なイラストレーターさんが週末に開催していた勉強会などに足を運んでいたりしたという村本さん。そこでは「こういう絵をかいたらいいよ」「こういうのを描いたら仕事につながるんじゃない?」など、多くの助言をいただいたようで、「すごく鍛えられたし、育てていただいたと思っています」と当時を振り返ってくれました。
 
 
 
――今の絵のスタイルもその時に?

村本:透明水彩との出会いも、上京してからですね。当時は描き方も知らなかったんです(笑)。「どんな表現や手法で絵を描いていこう?」と悩んでいた時にある作品に出会って「描いてみたい!」と思ったのがきっかけです。独学でここまできました。

 

▲本の表紙になったお酒のボトルのイラスト

 
――独学なんですか⁉独学でここまでの技術を習得するのは大変だったのではないですか?

村本:もう必死でした…。周囲には美大生が多く、自分は美大出身ではないのでコンプレックスを抱いていたんですが、その分「できることは全部やってみよう!」「いわれたことは全部やって、習得してやる」と意気込んでいましたね。

チャンスをものにした運と実力

チャンスをものにした運と実力
▲ユーモアを交えながら穏やかに語ってくれる村本さん

 
――下積みともいえる時期から、今に至るまでの経緯もさまざまありそうですね。

村本:当初は、勉強会で「仕事にしていくなら、手っ取り早いのは食べ物」と助言いただいて、出していただいた課題の成果物をファイリングして、イラストをデザインに使用しているデザイン事務所など40社くらいに片っ端から送っていたんです。そんな中、初めて声をかけていただいたお仕事がキリンさんのビールのパッケージでした。

――最初からすごい大型のお仕事ですね⁉

村本:ビギナーズラックってやつですかね(笑)。


▲キリン「とれたてホップ」など、さまざまな企業のパッケージイラストを担当!

 
――プレッシャーなどは感じなかったんですか?

村本:それよりも「とりあえず頑張るしかない」という気持ちしかなかったですね(笑)声をかけてくださったデザイン事務所さんが「今年はどうしよう…」と悩んでいるところに、ちょうど私の送ったポートフォリオが届いたそうなんです。

――強運ですね…!お仕事を語る上でのターニングポイントもこのお仕事でしょうか?

村本:大きいお仕事だったので、SNSなど周囲の反響も大きかったのは覚えていますが、ターニングポイントとするなら、大手自動車会社さんの顧客向けの壁掛けカレンダーのイラストでしょうか。

――理由はなんでしょう?

村本:どんなイラストを12か月分描くかも悩みましたし、案件自体がとても大きく報酬も中々だったので、その分「どうしよう…」と今まで以上にプレッシャーがありました。納品後は燃え尽き症候群みたいになりましたけど、このお仕事があったおかげで、その後のお仕事にも動じなくなったので転機だったんじゃないかなと思っています。


 今までは仕事の内容に一喜一憂したりと、思いつめることも多かったという村本さん。今はどんな依頼が来ても「なるようになる!」の精神で筆を進めることに注力していると語るお顔に、イラストレーターとしての確かな自信を感じました。

すべてが揃う“オールインワン”な区

すべてが揃う“オールインワン”な区
▲練馬で会ってみたい動物は「カワセミ」。光が丘公園のバードサンクチュアリで探したこともあるそう

 
――上京されてすぐ、練馬に移住されたのですか?

村本:コロナ禍がきっかけです。当初は家族の通勤の利便性だけで選んだ場所に住んでましたが、テレワーク推進の流れもあり引っ越しました。

村本:練馬区を選んだのは家の近所にしか出ないことも考えて、生活のしやすさを重視しました。あとは、私が大阪の富田林市出身なんですが、富んだ田んぼに林って書くじゃないですか、だからやっぱり自然がある場所のほうが落ち着くなと思って。

――大阪との共通点はあったりしますか?

村本:今の自宅も大阪の実家も、目の前が畑なのが共通点です。最近、家の前にムクドリやシジュウカラが現れたりして、動物たちとも触れあえるのも練馬区のいい所だなと感じています。

 

▲練馬区で実施された「えこだパンさんぽ」のイラストも担当!(2025年4月)

 
 実際に住むことで練馬区の印象が変わったという村本さん。「当初はちょっと田舎なイメージだった」と茶目っ気たっぷりに話しながらも、「意外とビルが多く都会的な街並みに驚きました!都心へ出かける必要がないくらい、練馬区ですべて完結するのがありがたいです」と、すべてが揃うその“オールインワン”さに、喜びと同時に住みやすさも感じてくれているようでした。

自然と爆音でリフレッシュ?

自然と爆音でリフレッシュ?
▲個展会場でも制作を行う村本さん

 
――「練馬区お花見散歩まっぷ」のイラストを担当されていますが、作成時に気をつけていたことはありますか?

村本:道の太さですね。全部の地域を、WEBマップと照らし合わせながら作成をしていました。読者が実際に歩く際に、ちゃんと役立つようにと意識して作成していました。

 

▲「練馬区お花見散歩まっぷ」を広げて制作当時を振り返る

 
――特に思い入れが深いイラストはありますか?

村本:石神井公園ですかね~!メタセコイアなど「こんなのがあったんだ!」と、描く機会がないと気づかないものがたくさんあったのが印象的でした。あとは「美術館を入れたい」というリクエストを採用してもらえたので、そこも思い入れがありますね!


――提案していただけたことで、より良いマップになりましたし、村本さんの練馬愛も感じました。

村本:描いていく中で、住んでいると忘れてしまう「練馬ってとっても素敵なものがたくさんある」という魅力を再確認できた気がしました。そういうものをもっと集めて「練馬っていい街なんだ!」というのを地域外の人にもアピールして、もっと活性化できたらいいのになという思いも芽生えました。

 

▲特にこだわった道の幅の制作風景を再現!

 
――周囲の方の反響はいかがでしたか?

村本:練馬区にはイラストレーター仲間が住んでいるので、度々反応をいただきました!マップから派生して、逆に「こんなところもおすすめだよ!」と教えてくれる人もいました。

――村本さんのおすすめの場所はどんなところですか?

村本:光が丘公園ですかね!園内をサイクリングするんですが、リフレッシュに最高です。植物を眺めて、木の枝の生え方や葉脈を観察したりもできるので、仕事にも役立つスポットです。
 
 
 そのほかにも、豊島園の映画館で楽しむIMAXレーザーや座席の動く4DXの上映などでのストレス発散や、練馬区役所にある展望レストランでの食事がおすすめなんだとか。「友達とランチに行って『あそこに富士山があってね』なんて話をして盛り上がれるのが楽しいです!」と楽しみ方も伝授いただきました。気分に合わせて、いかようにも楽しめるのが練馬区のいいところですよね!

もっとクリエイターが活躍できる街に

もっとクリエイターが活躍できる街に
▲制作はタブレット端末とノートPCの二刀流!

 
――商品のパッケージや雑誌、教科書のイラストなど、とても活躍の幅が広いのが印象的ですが、今後の展望があれば教えてください!

村本:常々思っているのが「三方良し」。クライアントさんや私、編集者さんやデザイナーさんたちなど、制作に関わるさまざまな方々といい関係を築いて、全員が納得できる素敵な作品ができればいいな、ということですね。「『頼んでよかった』と思ってもらえるようなイラストレーター!」が一番の夢です。

 

▲「若者や海外の方がもっと親しめるように」というクライアントの要望を落とし込んだ焼酎ボトルのイラスト

 
――練馬区でやってみたいと思っているお仕事はありますか?

村本:ねり丸とコラボしたいです!!違う人が描いた“いつもと違うねり丸”なんていうのがあっても面白いんじゃないかと思っているんです。テイストが変わることで“推しねり丸”を見つけてもらいやすいと思いますし、クリエイターの手が加わることでもっと練馬区の良さを盛り込んだデザインだったり、さらなる魅力を発信できるんじゃないかなって思っています。

 

▲個展が開催された「Vieill Bakery cafe&Gallery」

 
――とっても素敵です!

村本:今回個展をさせていただいている「Vieill Bakery cafe&Gallery」(ヴィエイユベーカリー&カフェ)店主の奥様は、歌手活動もされていてすごく歌が上手なんです!そのほかにも羊毛フェルト作家さんだったり、実は練馬区にはクリエイターさんが多いんです!

村本:そういった表現者の方が多く住む場所だからこそ、もっとさまざまなクリエイターが活躍できるフィールドが増えていけばいいな~、そんなお手伝いやきっかけとなる存在になれたらな~なんて思います。実現したらいいな!
 
 
 ふんわりとやわらかな印象とは打って変わって、しっかりとした信念や展望を口にする村本さん。お話を聞いているだけで、なんだかこちらも意欲がわいてくる、とっても素敵な方でした。次はどんな活躍を拝見できるのか、練馬区在住者ならずとも彼女の今後から目が離せません!


 

■撮影協力:「Vieill Bakery cafe&Gallery」(ヴィエイユベーカリー&カフェ)

■撮影協力:「Vieill Bakery cafe&Gallery」(ヴィエイユベーカリー&カフェ)

 
天然酵母や国産小麦など素材にこだわったパンを販売するベーカリーと、さまざまなアート作品を展示するギャラリーを併設したユニークなお店。
※ギャラリーの内容はイベントにより異なります。ご注意ください。
 

住所:東京都練馬区旭丘1丁目56-2
営業時間:水~土曜日 14:00~20:00、日祝日 12:00~18:00
定休日:月・火曜日
TEL:03-5996-4585