特集記事 Reviews
今回は、練馬をモチーフにしたりイメージしたり、さまざまな工夫を凝らした「練馬にまつわるグッズ」を紹介します。製作の背景には「練馬のことを知ってもらいたい」「自分たちの活動を知ってほしい」などの強い思いが込められています。自分で使うもよし、お土産や贈り物にしてもグッド! 暮らしを楽しく豊かにしてくれるグッズの製作者や関係者の方にお話を伺ってきました。
花や野菜を描いた陶器のセット 〜軽くて使い勝手もよく、料理も引き立ちます〜
しっくりと手になじむ実用的な器は、成形から絵付けまで自宅の工房で行っています。器には練馬区の木や花であるコブシやツツジを中心に、区内各地で咲き誇る花々や野菜がていねいに描かれています。
大泉の工房で、成形から絵付け、自宅の窯で焼成まで!
親子で手作り作品の工房を運営し、練馬区手工芸作家連盟の会長を務める川井淳子さん(染花創作盆栽研究家)
知人から「練馬にちなんだ図柄の陶器がほしい」という声があり、陶芸作家である夫と娘が相談しながら作ったのが、「花や野菜を描いた陶器のセット」です。成形から絵付け、自宅の窯を使って焼成まで、すべて大泉の工房で作っているのが最大の特徴です。
練馬区の木であるこぶしや練馬区の花のツツジ、清水山のカタクリ、大泉学園通りの桜などを図柄にしました。練馬は自然が豊富なので題材には事欠きません。地域の方からアイデアをいただきながら、お皿や湯呑などの作品を作りました。
手工芸品と共に、心豊かに暮らしてほしい
工房に飾られている作品
区が主催するイベントに、できるだけ参加するようにしています。過去の「練馬産業見本市 ねりまEXPO」では、絵付けのワークショップとして出展し、多くの方に陶器を手作りする楽しさを感じていただきました。
令和3年度は、「成人の日のつどい」のお祝い品の一つに選定されたんですよ。「花や野菜を描いた陶器のセット」の希望者が工房に来て、好きな図柄のお皿や湯呑を選んで持ち帰りました。親子で来られる方もいて、ほほえましかったです。練馬にちなんだ作品を作ったおかげで、区民の方とふれあえる場が増えたように思います。
また、交換留学生や姉妹都市との交流で、練馬のお土産品として海を渡った陶器もあります。私は日本が誇る伝統文化の一つとして、盆栽を海外に広めたいと、染花創作盆栽も創り続けています。
生活の中で、手工芸がある良さを感じてほしいと思っています。その思いは「花や野菜を描いた陶器のセット」でも同じです。作品を通して心豊かに暮らすお手伝いができたら、何よりもうれしい! 地元愛にあふれた陶器があることを、皆さんに知っていただけたらと思います。
夢泉工房(むせんこうぼう)
住所/練馬区東大泉6-53-13
電話/03-3925-0659
価格/1,000円~(税込)
販売場所/ねりま観光案内所、石神井観光案内所、練馬産業見本市ねりまEXPO、練馬まつり、照姫まつりなどで展示販売
学園桜染シリーズ 〜うっとりやさしい気持ちになります〜
大泉の桜の葉で染めたやさしい色と風合いに心が和みます。シンプルなストールやマフラーに一年中包まれながら、練馬の街を歩くのも素敵。ハンカチやクッション、コースターなどバリエーションも楽しめます。
大泉学園通りの桜の落ち葉から、自然な色を布に写し出す
ライン工房の宮﨑直子さん
私は日本櫻学会(桜の科学や文化を研究する専門家の集まり)の会員で、地域と桜をテーマに研究しています。地元で有名な大泉学園通りの桜並木、自宅から近いので毎年キレイな花を見ています。「この桜を利用して何かできないかな…」と、あれこれ考えながら落ち葉を集めてみました。日本櫻学会の仲間に相談すると、「葉っぱで染色をしてみたら?」と勧められました。
そこから「学園桜染」の試作を始めたのです。まずは10~11月頃、大泉学園通りの桜の落ち葉を収集。できるだけ落ちたばかりのキレイな落ち葉を選びます。どんな落ち葉でも染色はできるのですが、質のよい葉でないといい色は出せません。何年も続けているうちに、多くの葉の中から「私を染めて!」と訴えかける葉がわかるようになりました(笑)。
大泉学園通りの桜の落ち葉
染め方はシンプルですが、商品化に至るまでには苦労とリスクが伴い、膨大な時間を要しました。その経験と勘で、いつも「キレイに染まれ~」と念を込めて染めています。
材料は綿や絹などの天然素材が中心で、麻混などには化学繊維も含まれます。素材によって色の現れ方が変化し、同じ素材を同じ液で染めても仕上がりの色は異なるなど神秘です。二つとして同じものができないのが桜染の醍醐味。ですから「世界にただ一枚」を楽しんでいただけたらと思います。
ストールやマフラーで、いつでも桜を身近に感じてほしい
練馬区のイベントに出展した時のディスプレイ
「学園桜染」は以前、学園通り沿いにあった珈琲店オリエント ハローズ コーヒーで販売してもらっていました。お茶を飲むついでに、お誕生日や結婚祝いのプレゼントとして購入していただくことが多かったようです(※現在は、自家焙煎オリエント ハローズ コーヒーとして近隣に移転して営業。「学園桜染」も販売中)。
お花見の時期に学園通りの桜並木は散歩の人が増えますが、美しいのは花の時期だけではありません。新緑の季節も冬枯れも、桜には四季折々の魅力があります。学園桜染のストールを毎日のおしゃれに取り入れることにより、お花見以外の時期でも桜を身近に感じていられる…そんな使い方をしていただけたら染色家としてはうれしいですね。
ライン工房(連絡先:048-481-4480)
電話/090-7727-4006(オリエント ハローズ コーヒー 猪俣様)
価格/ハンカチ1,100円(税込)〜、ストール3,300円(税込)〜
販売場所/オリエント ハローズ コーヒー(練馬区大泉学園町6-28-33)、ねりま観光案内所、石神井観光案内所
WEB/http://rein2000.c.ooco.jp/
練馬大根ペンケース 〜心のこもった、愛らしいかたち〜
きめ細かい作りと裏地の細部までこだわって作ったハンドメイドのぬくもりを感じられる商品です。練馬大根をモチーフに、施設で織った「さをり織」の布をペンケースに。心をこめて作っています。
さをり織のペンケースは、利用者さんの創作活動のひとつ
東京高次脳機能障害者支援ホーム生活支援係の三宅久美子さん
東京高次脳機能障害者支援ホームは、主に高次脳機能障害者を支援する入所施設です。さをり織はシンプルな作業で、織り機に張った縦糸に横糸を織り込むだけ。手に麻痺のある利用者さんでも作ることができるので、さをり織の創作活動を行っています。
色の組み合わせは自由。利用者さんが好きな色糸を選んで、個性を出すという楽しみもあります。職員が手助けをしながら、ショールやマフラー、コースターなどに一つずつ丁寧に仕上げています。
10年以上前のことですが、職員の中から「練馬らしいものを創ろう」という声が上がり、「練馬大根ペンケース」が誕生しました。生成りまたは白の太い綿糸を使い、さをり織で布を織りあげ、裏地とファスナーを取り付けてペンケースに仕上げます。
綿糸を使うのは、汚れても洗濯がしやすいという理由から。ウールで作ったこともありましたが、毛羽立ったり、汚れやすかったりして、ペンケースには向いていませんでした。
ボールペンなどを5~6本以上入れることができ、コンパクトながら収納力バツグン。大根をデザインしたグッズは珍しいので、販売会などでも注目されるんですよ。
イベント販売で楽しく社会参加!(現在、一時縮小)
さをり織の作品
コロナ禍以前は、練馬区役所で開かれる障害者施設の自主生産品の販売会や、光が丘の障害者フェスティバル(障害者福祉大会)などに出展して作品を販売していました。普段は施設の中で過ごすことが多い利用者さんにとって、イベントでの販売はお客様と触れ合う貴重な場。「社会の中で何か役割を担いたい」という希望がかなっていたのです。
ところがコロナ禍で、ここ2年ほどはイベントが中止に。加えて、事業所が令和4年9月に清瀬市に移転したため、今は利用者さんが新しい環境になじむことを優先しています。状況が落ち着いたら、練馬区内での販路も考えたいと思いますので、その時には、やさしい風合いのさをり織「練馬大根ペンケース」をぜひ手にとってみてください。
東京高次脳機能障害者支援ホーム
住所/東京都清瀬市梅園1-3-32(建替えのために練馬区西大泉から清瀬市梅園に令和6年12月頃まで一時移転)
電話/042-497-3980(代表)
価格/900円(税込)
販売場所/現在、練馬区内で練馬大根ペンケースを販売する場所はありませんが、清瀬市の東京高次脳機能障害者支援ホームでは販売中。郵送販売も可。
WEB/https://www.tokyoengokyokai.or.jp/03nerima/
ねり旨(うま)になかむら箸 〜自分の作った箸で練馬の街を食べ歩きませんか〜
元材木店の倉庫跡を利用して開催される、箸づくりワークショップ。檜材をカンナで削り、世界で一つのオリジナルのマイ箸を作ります。マイ箸を持って、練馬区の美味しいもの「ねり旨(うま)」を楽しく食べましょう。
家業の材木屋が箸づくりのワークショップに生まれ変わりました
木と和と暮らしの代表の松本恵子さん
「木と和と暮らし」の場所は、中村橋で祖父と父の2代続いた材木屋でした。時代の変化もあり1992年に廃業、いくつかの材木と倉庫が残りました。これらを何か活用できないかと仲間と始めたのが、「木楽市(きらくいち)」というイベントでした。
木楽市では、エコやスローライフをテーマに、手作り品の販売とワークショップを開催。ワークショップでマイ箸を作り、それを活用することを総称したネーミングが「ねり旨になかむら箸」です。
2012年で木楽市は休止しましたが、箸づくりのワークショップは予約制で継続しています。倉庫を解体し、住まい兼貸しスペースとして改装した場所を利用(建て替えのため2023年3月から2024年春まで休止)。
練馬まつりや貫井図書館でもワークショップを開いたり、照姫まつりで「ねり旨になかむら箸」を販売したこともあるんですよ。
マイ箸から使い捨て生活を見直し、地域とつながってほしい
角材をカンナで削る様子
マイ箸は1cm角のヒノキの角材を、専用の治具(じぐ)を使って削れば、大人でも子どもでも誰でも作れます。カンナで削る時に多少の力が必要なので、小学生以上を対象にしていますが、特に危険なことはありません。初めてカンナを使うという方も多く、ザクザクと木を削る体験を楽しまれています。
マイ箸を作った参加者には、なかむら箸の焼印が押された箸置きを差し上げています。また、広げればランチョンマットにもなる手作りの箸袋も別売していますので、お弁当や食卓でも、日常的にマイ箸を使っていただけたらうれいしいです。
「ねり旨に」と名付けたのは、「マイ箸を持ち、練馬の美味しいモノを食べ歩いてほしい」という思いから。地元の飲食店とコラボして、マイ箸割引などできたらいいな…という構想もありましたが、まだ実現はしていません。
自分で作ったマイ箸は、簡単には捨てられないですよね!? 使い捨ての生活を見直すきっかけになれば、エコに繋がっていくと期待しています。
コロナ禍以前は、「ねり旨になかむら箸」の英語版のパンフや動画を作り、外国人観光客にも、日本の箸を体験していただきたいと準備を進めていました。こちらも実現には至っていませんが、ウィズコロナの状況等も踏まえて考えられれば、と思います。
東日本大震災のボランティアで福島でワークショップを開催(2011年)
木と和と暮らし(2023年3月から2024年春まで休止。再開は公式WEBサイトにて案内予定)
住所/練馬区中村北4-18-3
電話/090-5800-6630
価格/箸750円、箸袋750円、体験代3,000円(共に税込)
箸づくり体験/土曜 13時30分~14時30分
(2名から受付・1回4名まで・所要60分・小学生以上対象・2日前までに要予約)
WEB/www.kitowatokurashi.com