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牧野富太郎博士の愛した植物が息づく、緑のオアシス「牧野記念庭園」へようこそ! 画像

ライター:松田 亜希子 さん 体験・観光

牧野富太郎博士の愛した植物が息づく、緑のオアシス「牧野記念庭園」へようこそ!


大泉学園駅の南口から徒歩約5分。住宅街の一角に突如現れる、小さな森のように緑豊かなスペース。ここは世界的植物学者で練馬区名誉区民の牧野富太郎博士(1862~1957年)が、晩年の約30年間を過ごした住居と庭の跡地です。牧野博士死去の翌1958(昭和33)年に練馬区立の庭園として一般公開されました。

牧野博士は自分で採集したり知人から取り寄せたりした植物を庭に植え、「我が植物園」と呼んでこよなく愛したといいます。当時の面影が色濃く残る「牧野記念庭園」とはどんなところなのか、さっそくご案内いたしましょう。

一歩あるくごとに違う植物が出迎えてくれる

一歩あるくごとに違う植物が出迎えてくれる 画像

もともと個人宅でしたから、決して広くはありません。こぢんまりした庭園です。でも植物愛好家にとって、これほど魅力的な場所はそうはないでしょう。なにしろ300種類以上もの植物が生育しているのです。


 

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たとえば早春に訪れたなら、足もとではフクジュソウ(左上)やユキワリイチゲ(左下)、カタクリ(右)などが次々に可憐な花を開いています。


 

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目線を上げると、ガクの部分が緑色をしているのが特徴的なリョクガクバイや


 

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葉が出る前に鮮やかな黄色の花を咲かせるサンシュユなどを見ることができます。


 

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本格的な春が到来すると、見どころは何といってもサクラの開花です。正門を覆うように枝を広げているオオカンザクラをはじめ、庭園には10種類ものサクラの木が点在しています。


 

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一年で最も来園者数が多いのはサクラの開花シーズンです。なぜ日本人はこんなにもサクラが好きなのでしょうね。


 

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夏になると、春に芽吹いた新緑が濃く深くなっていきます。関東ではなかなか目にすることがないヘラノキは、ねりまの名木に指定されています。


 

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庭園の夏の花の代表といえばオオキツネノカミソリ。牧野博士が花の様子を庭で描いたスケッチが残されています。


 

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秋はやはり紅葉が美しい。赤や黄色に染まる木々を見ると心が洗われます。


 

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たくさん落ちている松ぼっくりを見つける楽しみも。ダイオウマツは樹木と同様に松ぼっくりも大きいですね。


 

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冬の庭園も風情があります。落葉樹の葉が繁っていない分、飛んでくる野鳥がよく見えるそうですよ。


 

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ツバキの一種、ハツカリは寒空の下でも凛と咲いています。
こんなふうに、いつ庭園に足を踏み入れても、四季折々の植物と触れ合えるのが「牧野記念庭園」なのです。


 

この庭園だからこその植物の楽しみ方BEST5

この庭園だからこその植物の楽しみ方BEST5 画像

牧野博士が生涯に発見・命名した植物は1,500種類以上にのぼります。たとえば仙台で発見し、その翌年に先立った妻・壽衛(すえ)の名を冠したスエコザサや


 

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タマノカンアオイなど、園内に植えられた博士命名の植物を探すのはいかがでしょうか。タマノカンアオイのような地味な花にも注目し、ほかの植物との違いを見出して名前を付けた牧野博士の心意気に想いを馳せてみましょう。


 

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秋になるとオレンジ色の花をたくさん咲かせ、強い香りを放つキンモクセイ。これも牧野博士の命名だとは知りませんでした。


 

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「牧野日本植物図鑑」と実物を見比べてみるのもいいですね。図鑑で知識を得ると、これまで気付かなかった植物の細部が見えてきます。


 

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ヤブミョウガの実物はこちら。小さな白い花を数段咲かせたあと、藍紫色の実をつけます。


 

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牧野博士は植物学者であるだけでなく、植物図の名手でもありました。「大日本植物志」に掲載された精緻なヒガンバナの図(個人蔵)と


 

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実物を見比べるのも一興です。秋のお彼岸のころに咲くこの花には、マンジュシャゲ(曼殊沙華)という別名があります。


 

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植物とセットで昆虫&野鳥観察もできますよ。


 

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講習室では、植物画家の石川美枝子先生によるボタニカルアート講座などのイベントが不定期に開催されます。イベントの開催予定は公式サイトをご確認ください。※写真は2019年の講座風景


 

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夏休みの子ども向けイベントは、植物に親しむきっかけになると大好評です。


 

牧野富太郎博士ってどんな人?

牧野富太郎博士ってどんな人? 画像

園内には牧野博士の遺品や関連資料を展示する記念館が併設されています。2010(平成22)年にリニューアルオープンしました。


 

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牧野博士のことを知りたかったら、まずは常設展示室へどうぞ。生涯をたどる解説パネルがあり、一生をかけて植物研究に打ち込んだ博士の足跡がよくわかります。

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愛用した植物採集道具や描画道具、執筆した書物、描いた植物図なども展示されています。

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企画展示室では、牧野博士や植物にまつわる企画展が年に3~4回開催されます。写真は2020年の「牧野日本植物図鑑」出版80周年記念展「日本に植物図鑑が必要だ!ーその誕生までー」の展示風景。

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記念館の隣りには書屋展示室があり、牧野博士の書斎と書庫の一部が当時の佇まいのままに保存されています。ここには約4万5千冊の蔵書がうず高く積み上げられていたとか。朝から晩まで研究に没頭していた博士の在りし日がしのばれる空間です。手前には博士のほぼ等身大パネルも展示。一緒に記念撮影できますよ。

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2022(令和4)年に生誕160年を迎えた牧野富太郎博士。2023(令和5)年春からNHKで放送予定の連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルになることが決まり、いま再び注目を集めています。放送前にここ「牧野記念庭園」で博士のことをよく知れば、ドラマにもぐっと感情移入できるのではないでしょうか。
写真は1930(昭和5)年に東大の学生たちと植物採集に出かけた博士(個人蔵)

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美しい庭園を散策できて、常設展や企画展を鑑賞できて、なんと入園料無料の「牧野記念庭園」。こんな緑のオアシスがある練馬区っていいな、と改めて思いました。ぜひ植物を愛で、季節の移ろいを感じに訪れてみませんか。


牧野記念庭園
所在地:練馬区東大泉6-34-4
電話:03-6904-6403
開園時間:9:00~17:00(企画展は9:30~16:30)
休園日:火曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始
入園料:無料
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/annai/fukei/makinokinenteien/makino_annai.htmlhttp://www.makinoteien.jp/


フリー編集者&ライター 松田亜希子(Akiko Matsuda)