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花や新緑が美しい季節になりましたね。昨夏から始まった拡張整備の工事を終え、2021年5月1日に「四季の香(かおり)ローズガーデン」が華々しくリニューアル! 「香りのローズガーデン」に加えて、「色彩のローズガーデン」と「香りのハーブガーデン」が新たにオープンし、これを記念して「シンボルローズ」がお目見え。見どころをガーデナーさんのコメント付きでお届けしま〜す。
リニューアル後、320品種460株のバラ!
〈写真〉5年前にできた四季の香ローズガーデン入り口(リニューアル後は「香りのローズガーデン」となります)
光が丘駅から徒歩5分のところに、2016年にオープンした「香りのローズガーデン」があります。それに隣接した場所に、色を楽しむ「色彩のローズガーデン」と、五感で楽しむ「香りのハーブガーデン」が新たにオープン。
この3つのガーデンを総称して「四季の香ローズガーデン」と呼びます。「香りのローズガーデン」のおよそ3倍の広さになりました。
あわせて老朽化していた「花とみどりの相談所」を改修し、「講習棟」に。これまで通り園芸相談や講習会などを行っていきますよ。
〈画像〉四季の香ローズガーデン 全体マップ。左から「香りのハーブガーデン」、「色彩のローズガーデン」、「香りのローズガーデン」
グラデーションで見せる「色彩のローズガーデン」
〈写真〉「四季の香ローズガーデン」は、「第一園芸みどりのまち共同事業体」が管理・運営を行っています。左から第一園芸株式会社の泉本みづきさん、村越匠さん(施設長)、忽滑谷(ぬかりや)史記さん、フロンティアコンストラクション&パートナーズ株式会社の副島久幸さん。
見どころについて教えてくれたのは、「四季の香ローズガーデン」を運営している第一園芸のスタッフです。
「新しくできた『色彩のローズガーデン』は、名前の通り色がテーマ。春から秋にかけて咲く四季咲きのバラを多く取り入れ、白からピンク、赤から黄色へと繊細なグラデーションが楽しめるように配置して植えてあるんですよ」
住宅地という立地のため、環境に配慮する練馬区の基本方針を踏まえ、病害虫に強い種類を選んでいるとのこと。そうすれば、農薬の散布が少なくて済むそうです。
シンボルローズ〈四季の香〉に願い込めて
〈写真〉シンボルローズ〈四季の香〉。特徴は、黄色とピンクが不規則に入り混じる絞り咲きの色合い
リニューアルを記念して、シンボルローズを提供した忽滑谷さんは、数々のコンテストで受賞するほど名のしれた育種家です。四季の香ローズガーデンでは現場責任者として3年間活躍し、現在は育種家の傍ら、ガーデナーとして運営に携わっています。
シンボルローズとは、バラ園を象徴するいわば“顔”となるバラのこと。いったいどんなバラなのでしょうか。
「名前は〈四季の香〉と付けました。公園の名前が付いたバラを世に送り出すことで、SNSなどを通じて、四季の香ローズガーデンを知ってもらう機会につながればいいな、という思いがありました」
忽滑谷さんの手元にストックとしてあったバラの中から提供されたとのこと。このバラを選ばれた理由は?
「光が丘の“光”のイメージは、白か黄色がいいかなと。ただ、白だと寒々しい光になるので、木漏れ日のような、暖かみのある黄色い光がいい。黄色とピンクの絞り咲きはキラキラして、光が丘にぴったりだと思いました」
「色彩のローズガーデン」の中央にできたフクロウのアーチのフォトスポット、その周囲にシンボルローズが49株植えられました。もうすぐ〈四季の香〉が咲くのが、とても楽しみです!
バラの新品種はどうやって作るのか?
〈写真〉忽滑谷さん「庭は成長してゆくもの。新しいガーデンもオープンから少しずつ成長する姿を楽しんでもらいたい」
新種のバラとは、どうやって作るものなのでしょうか。忽滑谷さんにお聞きしました。
「具体的な工程は、1年目の春に、花のめしべに違うバラの花粉を付ける受粉に始まり、秋に実がついて、冬に種を蒔く。2年目の5月くらいに小さい花が咲きます。それを1、2年くらいかけて大きくし、接ぎ木をしながら育てていく過程のなかで、良いものかどうか見極めます。新種ができるまで通常4、5年以上かかりますが、シンボルローズ〈四季の香〉は5、6年くらいかかりました」
結果が出るまでに、長い年月がかかるんですね。
〈写真〉シンボルローズ〈四季の香〉の苗木
「種を蒔いても芽が出ない、芽が出ても良いものができない…など、自然相手の作業のため報われないことがほとんど(苦笑)。でも、そういう苦労があるからこそ、良いものができたときの嬉しさもひとしおです。品種交配を通じてバラが潜在的に持っている遺伝的な性質を紐解くことができるのが楽しいです」
新しい品種を生み出す上で、最も大切なポイントは?
「交配でかけ合わせる親選びです。自分で表現したい色や香り、性質などに合わせて、母親(種子親)と父親(花粉親)を選んでいます。〈四季の香〉は、耐病性の強い、香りのある、絞り咲きのバラを作りたいと考えました。以前、私が発表した〈パウル・クレー〉というバラを母親にしてかけ合わせたので、花や葉の雰囲気がどことなく似ています。〈四季の香〉が皆さんに末永く愛されるバラになってほしいです」
〈パウル・クレー〉は、『香りのローズガーデン』と『色彩のローズガーデン』に植えられているので、〈四季の香〉と見比べてみてはいかがでしょう。
〈写真〉「色彩のローズガーデン」の鹿の親子のオブジェ
「香りのハーブガーデン」は五感で楽しんで
〈写真〉メタセコイアの木で囲まれた「香りのハーブガーデン」全景
新しくできた「香りのハーブガーデン」は、キッチン、ティー、ポプリと用途ごとに3つのコーナーに分かれています。
「実際にハーブを指で触って嗅いでみると、ふわ〜っといい香りが広がります。手を洗えるように水道の用意やベンチもあるので、ゆっくり楽しんでいってください」
ハーブはドライやフレッシュなままポプリやサシェで楽しんだり、ハーブティーにしたり、調理に使ったり…。香り以外にも、花や実にも注目してほしいとのこと。例えば、アーティチョークはつぼみをゆでてサラダに、7月~8月には紫色の立派な花が咲きます。
〈写真〉アーチの上に付いているのはホップの実
「アーチの上に付いているオブジェは、ビールの味や香り付けの原料となるホップの実。ツル性なのでアーチに這わせる予定です。いずれ同じ形のかわいい実がなりますよ」
新しくできた2つのガーデンは、環境省主催の第15回(令和2年度)「みどり香るまちづくり」企画コンテストで環境大臣賞を受賞しました。
〈写真〉村越さん「講習棟にはキッチンができたので、収穫したハーブを使ったワークショプを計画中。コロナ収束後をお楽しみに!」
午前中の「四季の香ローズガーデン」で香りを楽しもう
〈写真〉多種のバラが咲き誇る「香りのローズガーデン」 ※2018年5月15日に撮影
「四季の香ローズガーデン」は、香りがテーマになっています。5年の歳月をかけて見ごたえのある美しいバラ園に成長! 「ダマスク」「フルーティー」「ティー」など、6種類の香りにコーナー分けして植栽された国内でも珍しいバラ園です。
バラは、春(5月中旬~下旬)と秋(10月下旬~11月中旬)に見頃を迎えます。最も香りが強いのは、気温が上がらない朝のうち。バラの香りを楽しみたい方は、午前中の来園がおすすめですよ!
「今はコロナ禍で中止していますが、バラの見頃の時期は、バードバス(鳥の水飲み&水浴び場)にバラを浮かべて、香りの嗅ぎ比べを提供しているんですよ」
とても好評だったそう。再開が待ち遠しいですね。
泉本さんから、「おうち時間が増え、植物と触れ合う楽しさを知ったという声を耳にします。興味のなかった方やお子さんにも、知ってもらえたらうれしいです!」とコメントをいただきました。
さらに、他のバラ園と違うところは…。
「歴史のあるバラ園はバラだけを植えていますが、ここでは季節ごとの花も植え、バラとのコラボレーションやバラが咲いていない時期でも楽しめるようにしています。あとは入園無料というところも特徴でしょうか」
また、芝生スペースにハロウィンやイースターなどオブジェやクリスマスのイルミネーションの飾り付けが行われています。
〈写真〉リニューアルした「講習棟」。キッチンスペースもでき、外のスロープからも直接2階に行けるようになりました
取材を終えて…
ガーデナーさんは案内してくれている時でも、雑草をとったり、水をやったり自然に体が動いてしまうようで感心しました。そんな日々の繰り返しが、美しい庭を作っていくんですね。皆さんの話し方はとても穏やか。来園した際に見かけたら話しかけてみては? きっと気さくに答えてくれると思いますよ!
練馬区立四季の香ローズガーデン
全体の面積は14,000㎡。駐輪場、身体障害者用駐車場あり。入園料無料。
所在地:練馬区光が丘5-2-6
開園時間:午前9時〜午後5時
休園日:毎週火曜日(火曜日が祝休日にあたる場合は、その直後の祝休日でない日)と年末年始(12月29日〜1月3日)
電話:03-6904-2061
HP:https://www.shikinokaori-rose-garden.com/
*新型コロナウイルス感染症の予防対策を十分にして出かけましょう。
株式会社協同クリエイティブ
練馬・板橋のタウン誌「月刊Kacce(かっせ)」を発行している会社です。創業から42年、地域密着をモットーに、地元の人とのつながりを大切にしながら、取材や記事制作、HP作成、印刷物の制作を行っています。紙媒体とWebの両方で地域情報を発信しています!
(取材日:2021年4月2日)