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みなさんは「スパイス」というと、どんなイメージがありますか? 唐辛子などに代表される、ピリッと辛くて刺激的な味を想像する人が多いかと思います。
しかし、一口にスパイスと言っても料理の下ごしらえや、味を調えるために使ったり、お菓子を作る時の香りや風味づけに使うなど、国や料理によっても使い方は様々です。
そこで今回は、スパイス大国・インドの料理を中心に、スパイスを使ったメニューを出すお店を、練馬区内で見つけてきました♪
*以下の内容は、取材時(2020年3月時点)の情報です。新型コロナウイルスの感染拡大抑止のため、営業時間短縮やテイクアウトなどに変更の場合がありますので、詳しくは各お店のHPなどでご確認ください。
練馬で本格的な南インド料理が食べられる「ケララバワン」
まずご紹介するのは、練馬駅から練馬区役所に向かう途中に見えてくる「ケララバワン」さんです。店名は「ケララの家」という意味で、店主のクーダトディ・チャミさん(愛称:サッシー)の出身地である、南インドの南端「ケララ州」の家庭料理を提供するお店です。 近年、南インド料理を提供するお店も増えてきましたが、こちらは2004年8月のオープン以来、「本場の味が楽しめる」とあって、練馬区民はもとより、各地からその味を求めてやってくるお客さんの絶えないお店です。
「カレーリーフ」が味の決め手
写真:苗から育てている「カレーリーフ」
南インド料理の特徴は、主に豆や野菜、魚を使うこと。ケララバワンで使う野菜は、埼玉県新座市にある契約農家さんの畑で作っているのだそう。
ランチメニューでは、定番のカレーのほか、ナンの代わりに薄いクレープのような生地の「ドーサ」で食べる「マサラドーサ」(980円、税別)や、インドのお米「バスマティライス」をひき肉、卵と一緒に特製スパイスで炒めた「キーマプラウ」(1180円、税別)などがあり、ディナーではヨーグルトとスパイスでマリネした「チキン ティカ」など、単品メニューも豊富。その日の気分や空腹具合によって選べるのも嬉しいですね。
中でも、こちらのお店で欠かせないのが「カレーリーフ」というスパイスです。南インドやスリランカで多用され、カレーをはじめとする様々な料理に用いられています。日本の気候では栽培が難しいそうですが、ケララバワンでは試行錯誤を重ね、苗から育てているのだとか。生の葉の匂いを嗅いでみたところ、少し燻製したような優しい香ばしさを感じました。使い方は、最初にカレーリーフをスパイスとオイルに加え、香りを出してからメインの具材を加えて火を入れるのだそうです。
南インドの定食「ミールス」を食べてみた!
写真:「ケララ ミールス ベジ」(1500円、税別) *ディナーメニューより
ケララ料理の特徴は、ずばり「あっさり」していること! 一年の中で多少寒い時季もある北インドは「バターチキン」など、ややこってりとしたものが多いですが、南インドは年中暑く、気温が低い時でも28度はあるため、味付けもさっぱり・あっさりめになったのだとか。 「南インドの家庭で使うスパイスのベースは、ターメリック、クミン、コリアンダー、チリの4種です。色々な料理にスパイスを使うけど、キツくならないよう、味のバランスを見ながら、あっさりとした味にするんです」とサッシーさんが教えてくれました。
今回は、このお店のお客さんの8割が注文するという南インドの定食「ミールス」を食べてみました。よく「一晩寝かせておいたカレーはよりおいしい」と言われますが、ミールスは日常のおかずなので、食べるその日に作らないと美味しくないため、ほとんどのお店では予約しないと食べられないのだそう。しかし、ケララバワンでは常に多くのお客さんがミールスを注文するので、予約なしでもオーダー可能!
ミールスを初めて食べる人におススメの食べ方
目の前に現れたミールスは、ご飯のまわりに色々な小皿にのったおかずがのっていて「どうやって食べたらいいの?」と思う人(私も含めて)のために、お店では食べ方が書いてあるプレートも用意してあります。
まずは、豆の粉で作ったおせんべいのような「パパダム」を細かく砕いてご飯にのせます。 ご飯を少し取り分けて、そこにカレーやスープなどを少しずつかけて混ぜながら食べましょう。 そこに、無糖のヨーグルトも加えて食べると味がマイルドになりますよ。
それぞれのメニューを簡単に説明すると、上の写真中央の「サンバール」は、豆の水煮でとろみをつけた南インドの各家庭でよく食べるスープで、日本でいうお味噌汁のようなものですね。その隣の「ラッサム」は、豆から取ったスープに、数種のスパイス、にんにくとしょうがとコショウで辛みを出したすっきりとした味で、ダイエット効果が期待できると、近頃女性に人気なんだとか。 右端にあるデザート「パヤサム」は、ココナツミルクの甘さが締めにぴったりでした! 基本的なメニューは変わりませんが、使う食材は季節によって多少変更するそうです。辛さはあるものの、全体的に優しくて、スパイスの複雑な香りと風味が楽しめます。
目の前で淹れてくれる、名物「チャイ」
紅茶と牛乳をスパイスと一緒に煮だしたインドでよく飲まれている「チャイ」も名物。注文すると、店員さんが茶器を持って、目の前で注ぐパフォーマンスをしてくれます。高いところから注ぐのは泡を作るため。この泡がまろやかな口当たりになるのです。インドの家庭では、もっと低い位置で軽く淹れるそうですが、お店でパフォーマンスとして高い位置から淹れるのは簡単なことではないそうなので、必見ですよ☆
住所: 練馬区豊玉北5-31-4
TEL:03-3991-5218
URL:http://www.keralabhavan.com/
営業時間:(平日)午前11時~午後3時、午後5時~11時(土日祝)午前11時~午後11時
定休日:火曜日
「インディアンダイニング プラクリティ」で数十種類のスパイスを使った北インド料理を堪能
南インドの味を堪能したところで、お次はやっぱり、北インドの味が気になりますよね!(笑)
東武練馬駅から徒歩で約5分のところにある「プラクリティ」は、インド料理好きが高じて、現地で料理を学んだ店長のカンデル・リシランさんが、6年前に開店した北インドの料理をメインに出す店です。北インドの料理は、バターやミルクをたくさん使って、こってりとした味のものが多いですが、こちらのお店では、一品料理も多く、複数のスパイスで炒めたり、煮たりして味つけしたメニューがずらりと揃っています。
お店では、あらかじめ数種類のスパイスが配合されている「ミックススパイス(ガラムマサラ)」を使っているのですが、「MDH」と名のつく商品がインドで最高ランクのものだそうで、お肉や煮込み料理など、それぞれに合った「マサラミックス」があり、中にはメロンやミント、ざくろが入っている「チャットマサラ」なんていうのもありました。
他にもリシランさんが見せてくれたのは「フェヌグリーク」という葉を乾燥させたもので、すっとするような香りがするものや、定番のシナモンに、グリーンカルダモン、ブラックカルダモン、ナツメグ。小枝のようなものはクローブです。これらは、このお店で使っているスパイスのほんの一部だそう。
写真:リシランさんが見せてくれたお店で使っているスパイスの一部。
「インド医学のアーユルヴェーダには、300以上の薬草やスパイスを使ったレシピがあって、うちで使っている約30種類ほどのスパイスは、その内の一部でしかないんです」と言うリシランさん。定番のカレーは、メイン食材となる「チキン」「シーフード」「マトン」「野菜」に分かれていて、さらにそれぞれ5種類ほどあるので、どれにしようか毎回悩むというお客さんもいるんだとか!
早速気になるメニューを注文します! 私が選んだのは、ナスやトマト、玉ねぎなどを20種のスパイスで炒めたカレー「ベイガンマサラ」(980円、税込)と、ほうれん草と自家製チーズの「サグパニールカレー」(850円、税込)そしてリシランさんおすすめの「ガーリックティッカ」(2つで500円、税込)、ナンは、ナッツやレーズンが練り込まれた珍しい「カブリナン」(480円、税込)をテイクアウトしてみました。
写真:左「サグパニールカレー」、右「ベイガンマサラ」、奥「カブリナン」
カレーの辛さは「甘口」から「激辛」まで5段階選べます。リシランさんにおススメの辛さを聞くと「甘口と普通は、日本人に合うようにバターやミルク、砂糖を少し入れているのですが、インド人は普通、カレーに砂糖は入れません。なので、本場の味に近いものがよければ、中辛以上がいいです」とのことなので、カレーはどちらも「中辛」をチョイス。
「ベイガンマサラ」は、たくさんのスパイスが入っているとのことだったので「どのくらいスパイシーなんだろう?」と、少々ドキドキしてましたが……。一口食べてみると、まずは揚げナスの甘味を感じ、その後からスパイスの複雑な辛さと香りが口の中に広がってきました!
「サグパニールカレー」の「サグ」はほうれん草のことだそうで、現地ではベジタリアンの人も多く、ほうれん草は栄養豊富なため、インドでもよく食べる野菜なんだとか。そこに、自家製のチーズがごろっと入っているのですが、味はモッツァレラのようにあっさりしていて、食感は木綿豆腐のようで、とても珍しくて美味しかったです。リシランさん曰く「インドの食材を売っているお店で買ってくるものよりも、僕が作ったチーズの方が美味しいですよ」。
「マサラ」と名がつくカレーは、バターチキンやキーマカレーに比べて、スパイスを多めに使っているそうで、よりスパイシーな味を求める人は、ぜひ「辛口」以上に挑戦してみるのもおすすめです。
写真:ボリューム満点の「ガーリックティッカ」
ガーリックティッカは、数種類のスパイスで下味をつけて、タンドールという壺窯で焼いたもの。刻みニンニクがまぶしてあり、食べ応えも満点で、体の中から元気が出そうです。
「うちで出しているカレーは、ホテルの味です。使うスパイスは同じものだけど、インドの家庭で作っているのは、もっと水分が多くてあっさりしていますね。僕自身もスパイスを使ったメニューを食べて体調が良くなったことがあります。食べるもので薬のような効果があるのが、スパイス料理のいいところだと思います」とリシランさんが教えてくれました。
住所:練馬区北町2-41-3
TEL:03-6915-7730
URL:https://prakriti.owst.jp/
営業時間:午前11時~午後11時 (料理のL.O.は午後10時30分、ドリンクは午後11時)
定休日:月曜日
ハーブとスパイスで体を整えるお茶を「natural Café goen」
北と南インドのスパイス料理を堪能した後は、スパイス入りのお茶でちょっとティーブレイクを。練馬駅から歩いて2分ほど。ココネリの向かいの路地を入って行くと、住宅街にひっそりと佇むのが「natural Café goen(ナチュラルカフェ ゴエン)」です。一階のカフェでは、国産・無添加・無農薬の食材を使った体に優しいメニューがそろい、その全てを店主の工藤景子さんが手作りしています。
ランチの一番人気メニュー「国産若鶏のふわふわハンバーグ」(1000円、税込)や、「野菜・果実の水分のみで作った無水カレー」(980円、税込)なども気になりますが、今回私が注目したのは、「チャクラティー」(各480円、税込)という、数種類のハーブやスパイスを使ったお茶です。
写真:店内のカウンターには、素敵なデザインのお茶缶がずらり
「チャクラ」とは、「体内のエネルギーの出入り口」のことだそうで、インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」と深い関わりを持っています。分かりやすく言うとツボのようなもので、このバランスが崩れると、体調が悪くなると言われているそうです。人の体にはチャクラが7つあり、このお茶はそれぞれのチャクラを整えてくれるハーブやスパイスが配合されています。
以前はハードな仕事のせいでアトピーやアレルギーがひどかったという工藤さん。「食から変えてみようと、マクロビやアーユルヴェーダを学び、健康に気を使った食事を提供するお店を開きたいと思ったんです」と話す工藤さんが、勉強する中で出合ったのが「チャクラティー」なんだとか。
写真:カードの裏には、選んだ人へのメッセージが書いてあります。
お店でチャクラティーを注文すると、タロット占いのように、裏返したカードの中からピンときた一枚をひいて、そこに書いてあるお茶を注文するという面白いシステム。メニューには、1~7までのチャクラティーそれぞれに、「喉」や「胃・肝臓・脾臓・消化系」などのツボに良いとされるお茶が書いてあるので、気になる症状のチャクラティーを頼んでもOK。
私が選んだのは、心臓や循環器系のチャクラにいいとされる「4」のお茶。アニスという独特の甘い香りを持つスパイスが入っていて、味は番茶ベースで、思っていたよりもずっとクセがなく飲みやすかったです!
写真:「4」のチャクラティー
お店で1番よく出るのが、目や神経系のチャクラを整える「2」のお茶だそう。ショウガやレモングラス、リコリスなどが入っています。
チャクラティーのほかにも、中世のヨーロッパで「ハーブの魔女」と呼ばれた博学者、ヒルデガルドが残したレシピに基づいてメーカーがブレンドした「魔女のお茶」(500円、税込)もあり、店内でティーパックの販売もしていたので、お土産に購入して家で淹れてみました。
写真:「WOMEN SPICE TEA」(18袋入り、1000円、税込)
こちらのお茶には、コリアンダーやフェンネル、シナモンなどが入っていて「女性のお肌に良いですよ」と工藤さん。飲んだ翌日がちょっと楽しみになりました♪(そんなにすぐ効果が出るわけではないですが)
お店の隣には、野菜やハーブを育てている畑があって「今年は植えたハーブの種類を増やしました。これまでも、寒い日には、高麗人参やナツメなどで鶏肉や魚を煮た『薬膳煮』を日替わりで出していたのですが、もっと薬膳料理を学んで今後メニューを増やしていけたらいいなと思います」と工藤さんに今後の抱負を教えてもらいました。
住所: 練馬区練馬1-10-13
TEL・FAX:03-6755-3053
URL:https://cafegoen.com/
営業時間:平日:午前11時~午後6時、土日祝日は午後8時まで。
※午前11時~午後2時以外の時間帯にいったんお店を閉めることがあります。
※フードメニューが売切れ次第閉店。
※5名様以上かつ2日前までにコース料理でご予約を頂いだ場合に限り午後9時まで延長営業。
定休日:不定休
アメリカのスイーツに欠かせないスパイスとは?「Mockingbird」
お茶を飲んだら、甘いものが欲しくなってきました♪ おやつもスパイスを使ったスイーツを見つけましたよ!
東長崎駅から練馬総合病院の方向に歩いていき、千川通り沿いにある可愛らしいお店が「Mockingbird(モッキンバード)」です。店長の山口仁美さんは「毎日のティータイムに、一緒に味わえるようなお菓子を作りたい」という思いから、アメリカンスタイルの焼き菓子を販売するお店を2016年10月にオープンしました。
「元々アメリカが好きで文化などを調べていたところ、食べ物の中でも特にパイやお菓子にひかれたんです」と山口さん。定番のアップルパイのほかに、夏はアメリカンチェリー、秋はパンプキンなど、季節によって変わるパイや、パウンドケーキ、クッキーなどの焼き菓子が並びます。
こちらで見つけたのが「チャイスパイスケーキ」です。山口さんがアメリカの焼き菓子のレシピを探していた時に「こんなケーキがあるんだ」と見つけたのだそう。
写真:「チャイスパイスケーキ」(1カット320円、税込)
生地には、シナモンにジンジャー、カルダモン、ナツメグ、クローブ、コリアンダーと6種類のスパイスが使われているだけあって、複雑な香りがします。ハチミツも入っていて、しつこくない甘さが牛乳と相性抜群です!
山口さんは「アメリカで特別有名なケーキというわけではなく、初めは冬だけ販売していたのですが、割と人気があったので通年販売しようと思いました。購入されるのは女性が多いですね」。
その他にも、お店で販売しているバナナケーキやクッキーなど、スパイスが入っているお菓子があり、「スパイスを入れると深みが出て、味が広がる気がします。私はアメリカに住んでいたことはないんですけど、アメリカに留学したことがあるお客様からは『向こうでお母さんが作っていたお菓子と同じ匂いがする』と言ってもらうこともあって嬉しいです」と話す山口さんにアメリカのお菓子の良さを聞くと「大雑把で素朴なところですかね。現地のお菓子はもっと甘味が強いんですが、そこを食べやすいように調整すれば、日本人でも美味しいと思うお菓子はたくさんあるんです」。
写真:左は「キャロットケーキ」、右が「チャイスパイスケーキ」
また、アメリカのお菓子にシナモンは欠かせないそうで「アップルパイはもちろん、シナモンシュガークッキーなんていうのもありますし」と語る山口さんは、以前グラフィックデザインのお仕事をしていたそうで、お店のロゴもご自身でデザインされたそう。オシャレなパッケージだと、女子は嬉しいですよね!
住所:練馬区旭丘1-3-9
TEL:03-6873-9664
URL:https://mockingbird.shopinfo.jp/
営業時間:午前11時~午後6時
定休日:日・月曜日
取材のため、連日スパイスを摂取していたので、「胃がビックリしないかな?」と若干心配していたのですが、どのメニューも食べ始めてからジワジワと体の中から温まり、代謝も少し良くなったようで、毎日元気に過ごしていました!(あくまで、個人的な感想です)
今回は主にインドのスパイス料理をご紹介しましたが、世界各国でスパイスの種類や使い方の特徴があるようなので、次回はぜひ、タイやスペイン、韓国などのスパイス料理のお店を練馬区で見つけてみたいなと思いました♪