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プロフィール/いがらしかな 1989年生まれ。早稲田大学卒業後、旅行会社にて広報・プロモーション企画を担当。26歳で結婚を機に農業を始め、野菜料理が大好きになる。ブログ「農家のレシピ帳」を開設し、旬の野菜をふんだんに使った簡単料理のレシピを発信。書籍、WEBサービスへのレシピ提供、コラム執筆などを手がける。野菜コーディネーター資格保有。練馬でお気に入りの店は、パティスリープラネッツ(大泉学園町)。「ケーキが好きでよく買いに行きます♪」
旅行会社の勤務から、練馬区大泉町で100年以上続く五十嵐農園4代目に嫁ぎ、「野菜の魅力にはまりました」という、いがらしかなさんに農家に嫁いだエピソードから、野菜料理家として活躍する”今”と”これから”について聞きました。
小さい頃から野菜が好き。結婚を機に農家へ
〈写真〉ご主人とかなさんの出会いのきっかけとなったメドックマラソン(フランスにて)
かなさんは、東京郊外の国分寺、武蔵小金井育ち。「練馬区はみどりが多く、馴染みやすかったですね」といいますが、結婚するまで農業とは無縁の生活でした。
大学卒業後は旅行会社に就職し、広報・プロモーション企画を担当。会社勤めだったご主人との出会いは意外なところにありました。
「『フランスで、ワインを飲みながらフルマラソンを走る!』という企画ツアーがあり、私は企画の一員として同行しました。お客様とはツアーの前後に何度も交流会があり、皇居を走ったりワインを飲んだりして仲良くなり、その中の一人が将来の夫に(笑)。彼はマラソンよりも、むしろワインが好きで参加していました」
ご主人もかなさんも結婚を機に退職し、2016年4月に夫婦そろって就農。生活が一変することへの戸惑いや不安はなかったのでしょうか。
「夫は、結婚のタイミングで就農しようとずっと前から決めていたようで、『一緒にやってほしい!』と言われました。私は小さい頃から野菜が好きで、食の仕事にも興味があったのですんなりと」
採れたての野菜、「こんなに味が違うんだ!」と感動
〈写真〉五十嵐農園で収穫された野菜
「五十嵐農園」という農園名は、区内に数か所あるそうですが、「大泉町の五十嵐農園」がかなさんの嫁ぎ先。畑の面積は80アールで、サッカー場1面に相当する広さ。ご主人とご両親の家族経営で、キャベツを主力に地元の特産品である練馬大根、トマト、ナス、キュウリ、白菜など年間40〜50種類を生産販売しています。直売所(無人販売機)でも購入できるそうですよ。
「機械で畑の畝(うね)にビニール資材(マルチシート)を張ったり、種を蒔いたり。収穫して、トラックを運転して出荷の手伝いもしました。一通り、基本は経験しました。練馬大根は一本一本、手で収穫するのですが、太くてまっすぐではないので一本も抜けず…。力がなくて、この作業だけは全く役に立ちませんでしたね(苦笑)」
楽しそうに話すかなさん。ほかには、自分の背丈まで伸びるサトイモの葉、真ん中がバリッと割れて花が咲くキャベツ、木になっていると思っていたピーナッツは地中で育ち、よくわからないまま食べていたブロッコリーは実はつぼみだったなど、発見もいろいろあったそう。
「毎日食べるものでありながら、野菜についてぜんぜん知らなかったことに気づかされました。そして何よりも、採れたての野菜がおいしくて、『こんなに味が違うんだ』と感動したんです」
そこで農家の出身ではない自分の目線で、野菜や農業について発信しようと、ブログ「農家のレシピ帳」を開設。野菜が育つ様子や豆知識、おすすめのレシピを綴ることにしました。
読者からの「おいしかったよ!」が励み
〈写真〉五十嵐農園の畑ですくすくと育つサトイモ
2年間の就農を経て、現在、かなさんは野菜料理家に専念しています。この理由について伺いました。
「ブログでいちばん反響があったのが野菜のレシピです。また、練馬春日町のスーパーに五十嵐農園のコーナーがあるのですが、ここでも『どうやって食べるの?』というお客様の声がいちばん多く、旬の野菜のおいしい食べ方を伝えることが大切だと思いました」
料理好きのかなさんが独学で開発したレシピは約400品。さらに、企業から依頼を受けて考案したレシピを含めると、なんと600から700品にのぼるそう! インスタグラムのフォロワー数も右肩上がり、レシピポータルサイト認定の料理家などとして活動の場を広げています。
「SNSを通じて『子どもがたくさん食べました!』とか『家族が喜んでくれました!』というコメントをいただきます。スーパーに夫が出荷したときには、ブログを見たお客様から『すごくおいしかったよ!』と声をかけていただくそうで、私の大きな励みになっています」
かなさんの料理家としてのレシピにはどんな特徴があるのでしょうか。
「農家として2年間の栽培経験をしたことは、大きな強みだと思っています。レシピは、『おいしい・簡単・野菜たっぷり』を目指しています。『おいしい』というのは、甘みや旨みを調味料に頼るのではなく、甘みが足りなければ玉ねぎを、旨みが足りなければキノコやトマトを足すなど、できる限り、野菜の力を借りるようにしています。私も会社員時代は忙しくしていたので、レンジやフライパンひとつでパパッと『簡単』に作れるように。野菜が主役となるような『野菜たっぷり』のレシピを心がけています」
この夏に発行される家庭菜園の本の中で、野菜をたっぷり消費するかなさんのレシピが150品ほど掲載される予定です!
オススメのレシピを紹介♪
〈写真〉トマトの砂糖漬け(左)とお花ピクルス(右)
これからの季節にふさわしいオススメのレシピを教えてもらいました!
■トマトの砂糖漬け
湯むきしたトマトを砂糖水に一晩漬けるだけ。トマトをスイーツ感覚で食べられる、夏にぴったりの甘いトマトです。夏の水分補給にもオススメ。ミニトマトで作るのも◎です!
https://tokyo831.com/post-4078
■お花ピクルス
いつものピクルスが花型で抜くだけで可愛らしくなります。
おもてなしや作り置きにぴったり。
https://tokyo831.com/post-5032
〈写真〉枝豆ごはん(左)とじゃがいものキーマカレー(右)
■枝豆ごはん
枝豆の香りが良い、夏の素朴な炊き込みご飯。ゆでた枝豆をご飯と一緒に炊くだけです。炊きたてがおいしいです。
https://tokyo831.com/post-6026
■じゃがいものキーマカレー
煮込み不要、ルー不要。ごろっとしたじゃがいもがおいしい、フライパンで簡単に作れるカレー。
子どもの夏休みの昼食にも!
https://tokyo831.com/post-5966
夫の野菜とコラボレーションが夢
〈写真〉エプロンのロゴはご主人のお手製(左)、ドレスはかなさんのお手製(右)
野菜料理家として活動するかなさんの毎日は、朝5時に起き朝食を支度。定番メニューはご飯と野菜がたっぷりの味噌汁。その後は、仕事場のキッチンにこもり試作。
「黙々と作業するのは、けっこう好きなんです。小さいときから作ることが好きで、リカちゃん人形の洋服を作ったり、結婚式のドレスも自分で作りました」
この“好き”という気持ちに加えて、発信方法が手馴れている印象を受けるのは、旅行会社時代に培ったPRのノウハウがあるからでしょう。しかも、勉強熱心。料理をおいしく見せるために、写真教室に通ったり、食材の色の合わせ方や切り方、お皿の合わせ方などのフードスタイリングも勉強中だとか。
あくまで自然体で、好きなことを突きつめていくのが、かなさん流のライフスタイルなのかもしれません。そして傍らには、「いつも助けてもらっている」というご主人の存在も。ワインエキスパートの資格を持つご主人が選んだワインに料理を合わせたり、逆に、料理にご主人がワインを合わせたりする素敵な時間もあるそうです。
エプロンのロゴにも注目してください! 写真撮影用に用意してくれたエプロンのロゴは、無地では物足りないと急きょ、ブログアドレスの「https://tokyo831.com(東京ヤサイドットコム)」より、ご主人が手作りで用意してくれたもの。心温まる夫婦愛ですね♪
最後に、これからのことについて聞きました。
「まず第一は、野菜料理の研究を深めていきたいです。将来的には、夫の作る採れたての野菜を使った料理教室を開きたいですね。プライベートでは、スペインや台湾などにおいしいものを食べに行きたいなと思っています」
旅先で出合った料理はいつか、かなさんのレシピに生かされるはず。期待しています!
◇ブログ「農家のレシピ帳」(https://tokyo831.com)
◇インスタグラム(https://www.instagram.com/tokyo831_com/)
◇区が配布している農産物直売所マップ「農産物ふれあいガイド」(五十嵐農園は76番)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/nogyo/tokei/sasshi/261101_map.html
◇取材日:2019年5月14日
(写真上から2枚目〜8枚目、10枚目の右は五十嵐さん提供)