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ねりま人 #122 相原亜矢子さん(農家19代目) 画像

ねりま観光センター さん ねりま人

ねりま人 #122 相原亜矢子さん(農家19代目)


●プロフィール/あいはらあやこ 1967年、練馬区田柄生まれ。18代続く農家の一人娘として育つ。23歳の時に結婚し、4人の子どもに恵まれる。36歳で夫とともに就農、現在に至る。農林水産省が取り組む「農業女子プロジェクト」の農業女子メンバー

23区で最も農地が多い練馬区。2019年には、練馬の都市農業の魅力と可能性を発信すべく「世界都市農業サミット」が開催されます。都市農業として練馬の農業が注目を集めるなか、今回は農家を継いだ19代目の相原亜矢子さんに、日々の暮らしや農家を続けることについてお話を伺います。

農家の一人娘として、プレッシャーを感じていた子ども時代

農家の一人娘として、プレッシャーを感じていた子ども時代 画像

〈写真〉相原さんご家族(背景にあるのは畑にたてた鯉のぼり)

相原さんは農家の一人娘として生まれ、大学を出て、農協(現JA東京あおば)に就職しました。

「練馬小学校、練馬中学校出身で、農協へは自転車で通っていました。そう言うと、練馬区から出たことないんじゃないかって思われそうですが、高校や大学は区外だったので電車に乗って通っていましたよ~(笑)」と明るく話す相原さん。幼い頃から農家を継ぐように刷り込まれてきたと言います。

「後を継ぐことへのプレッシャーはありました。私はお嫁さんに行けないんだとか、長男とは付き合えない、農家に婿に来てくれる人なんて絶対いないって思っていました」そんなふうに思春期を過ごしながらも、畑のある環境が好きで、畑に携わっていきたいという気持ちもあったそうです。

やがて実家が農家であるご主人と出会い結婚。お子さんが小さい頃は相原さんは子育てをし、ご主人はサラリーマンとして働いていましたが、15年前にご夫妻で就農しました。四世代同居の10人家族、取材時に在宅されていたご家族をパチリ!

少量多品目を露地栽培。もちろん、練馬大根も!

少量多品目を露地栽培。もちろん、練馬大根も! 画像

〈写真〉相原さんの畑で採れた野菜と右は練馬大根

現在、相原さんの父親が主となって畑を取り仕切り、相原さんたちはサポートしながら、新しい野菜づくりにもチャレンジしています。畑は露地栽培。そこで作っているのは、キャベツ、小松菜、ほうれん草、モロヘイヤ、ブロッコリー、キュウリ、トマト、ナス、人参、ピーマン、ズッキーニ、バジルなどおなじみの野菜から、アスパラガスに似た味と食感が楽しめるスティックセニョール(別名・茎ブロッコリー)、ひょうたんのような形で甘味とナッツの風味があるバターナッツカボチャ、辛味のない甘長トウガラシ、平たい形をした栄養豊富なモロッコインゲンなど、ちょっと珍しい野菜まで実に多彩。

「お客さんから時代とともに珍しい野菜を求められるようになり、年間で40種以上の野菜を作るようになりました。それは都市農業のひとつの形であるのかも知れません。もちろん、地元野菜の練馬大根も生産しています。練馬大根は管理生産のため区から種を支給してもらって作っています。抜くのがちょっと大変ですが(笑)」。

練馬大根は長さが70~100cmにもなり、首と下部が細く、中央部が太いのが特徴。抜くのには一般に流通している大根よりも3~5倍の力が必要とも言われます。

お客さんとコミュニケーションができる対面販売が好き

お客さんとコミュニケーションができる対面販売が好き 画像

〈写真〉女子マルシェの様子

練馬は農家が多いこともあり、生産者が野菜などを直接対面販売するマルシェが盛んです。区外からも新鮮な野菜を求めて、多くの方が訪れます。相原さんの野菜はおもにJAに出荷されますが、女子マルシェなどで販売したこともあるそうです。

「対面販売でお客さんとお話するのが好きですし、新鮮な野菜を食べてもらえるのは、何よりうれしい。『おいしかった!』という声を直接聞くのは、原動力にもなります」

最近は、採れた野菜の情報を友人にグループラインで一斉送信してご自宅で販売することも。う〜ん、なんともうらやましい限りです!

農家で育ち、畑仕事に携わるから、伝えられることがある

農家で育ち、畑仕事に携わるから、伝えられることがある 画像

〈写真〉パン教室で作った、野菜を具材にしたパン

旬の野菜の食べ方や味を知ってもらうために、母屋で少人数の料理教室や、野菜を使ったパン教室も行っています。参加者から、「この野菜、珍しい。初めて食べるわ」「どんな風に畑でなっているの?」などさまざまな声が聞けるのも楽しみだと言います。最近は忙しくてなかなか更新ができていないそうですが、ブログ「都市農家 えんがわ日記」で野菜の写真をアップし、畑仕事のことやパン教室の様子なども書いています。
             
例えば、収穫したほうれん草の場合、傷んだ葉っぱを取り、一定の重さに束ねて、袋に詰める。それらの工程を経てやっと出荷できます。

「店頭にきれいに並んだ野菜しか目にしない消費者、特にお子さんはその状態が普通だと思うんです。でも、野菜がなっている様子や人の手がかかっていることを発信するのは大事だと感じています。たまたま私が農家で育っているので、それを伝えられる立場にいるということです」

好きなところが多すぎて、田柄愛があふれ出す!

好きなところが多すぎて、田柄愛があふれ出す! 画像

〈写真〉田柄川緑道

畑を通じて地域の方と交流し、まさに地元に根ざしている相原さん。練馬区内で好きな場所を尋ねてみました。

「田柄をアピールしていいですか(笑)。畑が多くて、素朴で、そんなに開けているわけでもないんですけど、この地域が本当に好きなんです。光が丘美術館や隣の古民家風のお蕎麦屋さんの佇まいとか、田柄5丁目にある南部さんの赤門(相原家薬医門)、田柄川緑道、うちの裏にある佐久間農園(いちご農家)さんや自分の家の周りも…」
次から次へと好きなご近所が飛び出して、地元愛がいっぱい!

「今でもお盆になるとちょうちんをぶら下げてお墓に行くんです。田柄は昔からの風習を大事にする地域で、それも居心地がいいんです」と答えてくれました。

「いつまでもこの環境を守っていきたい」という思い

「いつまでもこの環境を守っていきたい」という思い 画像

〈写真〉相原家の庭にある桜(左)/右は年末の餅つき(右)

田柄は昔から住んでいる人が多く、町会もしっかり役割を果たし、婦人会や講(こう)、氏子のつながりも強いので、近所づきあいは他の地域よりも密だそう。戸建てやマンションも増え、新しく住民になる方に対してもオープンな雰囲気で歓迎しています。「そうした会のつながりで、古い人と新しい人が交流するのは大事だし、何より楽しい」という笑顔で話す相原さん。人が好きなんだな〜と感じます。

相原家では、毎年年末は家族や友人たちを呼んで餅つきをします。昨年生まれた初孫のために、今年は畑に大きな鯉のぼりも揚げました。地域の風習やつながり、日本の行事、それらを肩肘張らずに生活の中で残していこうとする相原さんは、どこまでも自然体。「これからもこの環境を守っていきたい」と語ります。

最近は相続税支払いのため畑を売り、仕方なく農家をやめる方もいます。また、農業を継ぐ人がいないといった問題で、荒れた畑もよく見かけます。都市農業の課題を身近に感じつつ、農家をどのように続けていけばよいか、何かヒントを得ようと「農業女子プロジェクト」にも参加しました。それは農林水産省が女性農業者の能力を生かし、就農者を増やす取り組み。相原さんもイベントで野菜を提供するなど活動をしながら、都市農業に携わる方と人脈づくりに、今後に生かしたいと考えています。

地域に必要とされる農家に。家族みんなが描く夢

地域に必要とされる農家に。家族みんなが描く夢 画像

〈写真〉桜の下にあるたくさんの鉢植え

減りつつある都市農家の中で相原さんご一家は、「ただ野菜を作るだけじゃなくて、地域の方に必要とされる農家でありたい」と考えています。具体的にどんなことを思い描いているのでしょうか。

「料理好きの主人を巻き込んで、採れたての野菜を料理して、おいしく食べられるカフェのようなコミュニティを作りたいですね。この辺はお年寄りも多いので、老若男女が楽しめる場にしたいです」

相原さんのお母さんは、花が大好き。玄関先では立派な桜の樹が出迎えてくれて、庭には地植え、鉢植えの色とりどりの花が咲いていました。花を眺めるために、わざわざ家の前を通る人もいるほど。夢が実現すれば、花を眺めながらおいしいものを食べられる、とっておきの場所になりそうですね。

相原さんの長男も、この春からは後を継ぐため就農しました。さらにお孫もさんも誕生し、今後がますます楽しみ。与えられた環境だからこそ大切に思い、守っていこうとするのは自然なことなのかもしれません。家族みんなが古くから伝えられてきたものを守りつつ、新たな夢を描いています!

相原亜也子さんのブログ「都市農家 えんがわ日記」
https://ameblo.jp/aya3640pekopon
(写真上から3、4、5、7枚目は、相原亜矢子さんの提供です)