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ねりま人 #120 Boojilさん&伊藤篤志さん(東京おかっぱちゃんハウス) 画像

ライター:協同クリエイティブ さん ねりま人

ねりま人 #120 Boojilさん&伊藤篤志さん(東京おかっぱちゃんハウス)


●プロフィール/ぶーじる 1984年、横浜生まれ。アーティスト・イラストレーター・エッセイスト・漫画家。アジア、中南米などのひとり旅からインスピレーションを受けた作品は、カラフルで独特な世界観を表現。メキシコに留学後、「東京おかっぱちゃんハウス」を上石神井にオープン。2015年5月に第一子を出産。著書「おかっぱちゃんの好きになる人 難あり男子」「おかっぱちゃん旅に出る」など。

●プロフィール/いとうあつし 1984年、横浜生まれ。3~5歳まで、父の海外出張でアメリカにいた影響で、アートや音楽など、芸術に興味を持つ。Boojilさんと2011年に結婚。2015年に金融関係から転職し、おかっぱちゃんハウスにカフェをオープン。多彩なイベントを企画、開催している。

上石神井に佇む、敷地100坪、築60年の古民家。昔懐かしい縁側に、畳のにおいにくつろいで、人との距離が自然と近くなる場。ここをアトリエ兼イベントスペース「東京おかっぱちゃんハウス」として開放しているのが、イラストを中心に活躍する、アーティストのBoojil(ブージル)さんと、キュレーターで夫の篤志さん。若き夫妻の感性が古民家から、キラキラと光彩を放っています!

「東京おかっぱちゃんハウス」って、なんだ!?

「東京おかっぱちゃんハウス」って、なんだ!? 画像

――瓦屋根のザ・昭和な古民家「東京おかっぱちゃんハウス」、ブージルさんの描き出す木彫りの表札やイラストが妙にマッチして、ユニークでおしゃれな雰囲気をかもし出しています。ところで、東京おかっぱちゃんハウスって、どんなところ?

Boojilさん(以下【B】)「平屋で部屋は8つあり、イベントスペースは20畳の広さがあります。開催してきたイベントは多種多様で、展示会、ワークショップ、上映会、ライブ、マルシェなど…。イベントスペースとして独自で主催することもあるし、部屋を貸し出すこともあります。子どもから大人まで、ご近所さんから海外から来た人まで、いろんな人がやってきます!」

――練馬の新たな文化の発信地であり、何か楽しいことをやっている地域の寄り合い場、という感じですね。
「東京おかっぱちゃんハウス」をオープンしたきっかけは?

【B】「場所を借りて個展やイベントを開催するうちに、拠点がほしいなと思うようになりました。そして、語学留学を兼ねてひとり旅をした中南米で、濃密な近所付き合いをする人間関係に影響を受けて、帰国後すぐに物件探し。2日目にインターネットでこの古民家を見つけて即決です(笑)。2013年7月にオープンしました」

――イベントによっては人が家に入りきらない時もあるそうですが、「居心地のいい古民家に助けられている」とブージルさんは言います。練馬との出会いは偶然でしたが、オープンから約4年、今では地域のご縁がたくさん広がっています!

さびしがりやだから…人が好き、コミュニケーションが好き

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――Boojilさんは小さい頃から絵の大好きな少女でした。現在は、イラストレーターとしてTV番組のアートワーク、広告、雑誌など様々な媒体で活躍中。世界各国のひとり旅の体験を綴った旅エッセイ『おかっぱちゃん旅に出る』は、NHK Eテレでアニメ化も! 人もうらやむほど華やかで順風満帆の人生を送ってきたかのようですが、聞けば中学までは「内気な女の子だった」とのこと…。

【B】「変わったのは高校に入ってから。面白い絵を描くと、笑ってくれたり、楽しんでくれたりする友だちに出会って。絵のおかげで自信がついて、少しずつオープンな性格に変わっていったんです」

イラストレーターになることは親には猛反対されましたが、独学で努力し続けて、売れない時期を乗り越え、夢を叶えました。

【B】「好きな仕事を続けるためには、諦めないこと。『絶対モノにしてやる!』という負けん気。そして楽しく&たくさんコミュニケーションをとること。先輩方からそう教わってきて、自分でもようやくそれがわかるようになってきました。」

【B】「とにかく人が好きなので、コミュニケーションの場を作ることができて嬉しく思っています。」

十年来の友人が、夫になった!

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――Boojilさんと夫の篤志さんの出会いは、高校2年生のとき。クラスが一緒で、地元も一緒、育った環境も似ているふたりは、すぐに付き合った…ワケではなく、ずっと仲良しの友だち関係でした。
その関係が変わったのは、3.11の東日本大震災がきっかけに。

篤志さん(以下【篤】)「彼女がとても心配して、連絡してきてくれました。横浜にいたので被災地ではなかったけど、停電や節電で気分も暗くなり、将来が不安に…。そんな中、お互いを気遣って支え合うようになりました」

【B】「あの頃、本当に大事なものが何かわかって、無駄なものはそぎ落とされたように思うんです」

――石神井の氷川神社で開いた結婚式は、大勢の友人たちに囲まれて幸せいっぱい。その後、かわいい男の子に恵まれ、幸せの絶頂!と思いきや、家族に大きな転機が訪れます。篤志さんが、会社を辞めることになったのです。

会社を辞めて…好きな仕事に出会えた

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――篤志さんは、子どもの頃からアートが大好きな少年でしたが、大学卒業後は金融関係に就職。7年間懸命に働いてきましたが、部署が異動になり心境に変化が起こり、転職を考えるようになります。

【B】「そばで見ていて、とにかく夫の身体が心配でした。そして、夫にも好きな分野でトライしてほしいという気持ちもあったので、『会社を辞めなよ』と勧めました」

――生後3か月の子どもがいながら、夫の退職を許容するのはなかなかできることではありません。Boojilさん自身がずっと大好きなイラストで生計を立ててきたからこそ、「会社以外にも生き方がある、いざとなったら自分が支える」と、覚悟を決めたと言います。実際、子どもにエネルギーをもらいながら、「私が頑張らなきゃ」と仕事に励んだそうです。かくして篤志さんは、東京おかっぱちゃんハウス内にカフェをオープン! さらに、自分の芸術センスを活かした様々なイベントを開催し、おかっぱちゃんハウスを盛り上げています。

【B】「夫の変貌ぶりには、私も驚きました。サラリーマン時代は、人と全然喋らなかったのに、今は人が変わったみたいに明るい!」

【篤】「華やかな彼女の世界に、昔は一歩引いていたんです。でも、今の仕事は本当にやりがいがあって、自然とコミュニケーションも楽しくなりました」

――好きな仕事で、人はいつでも変われる。篤志さんの決断は、そんなことを教えてくれます。

東京おかっぱちゃんハウスのこれから!

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【篤】「アート全般の文化を突き詰め、もっといろいろなことができる場にしていきたいです」

【B】「ここで出会った人たちが、『人と出会うことって面白いね』って感じてくれたらうれしい。練馬を起点に、他の地域でもコミュニケーションの場をつくりたいと思っています」

――東京おかっぱちゃんハウスに「東京」が付いていることからも、他の地域への広がりを視野に入れていることが伺えます。夫婦で作り上げた自由なコミュニケーションの場が、練馬から全国各地に広がっていったら素敵ですね!

東京おかっぱちゃんハウス https://www.okappachan.com
Boojil WEB SITE http://boojil.com/

(5~6枚目の写真・画像は、東京おかっぱちゃんハウスの提供です)

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