特集記事 Reviews

#093 イラストレーター
近藤ゆたかさん

空想科学読本のイラストで
理系の経歴が役に立った!


 マンガ・アニメ・特撮などのSF世界を、大真面目に科学検証。1990年代より一世を風靡し、今や15巻まで続くロングシリーズとなった『空想科学読本』。そのイラストを担当するのが、近藤ゆたかさんです。

「特撮やアニメ関係の本の仕事でご一緒した編集者から、『ちょっと読んでみて』と初稿を渡されて。理工学部卒業だったんで、『推進力がこう、摩擦力がこうで…』と図に起こしたら、『その線で!』と頼まれたんです。理系の経歴が役に立つ時が、ようやくキタ!と(笑)」

 印象に残っている回は、映画『ラストサムライ』。心象風景でより大きく映された富士山が、一体何メートルなのかを検証した回でした。

「筆者の柳田理科雄さんが、三角関数や三角比を使って、画面から高さを導きだして。そんなことまでしちゃうの!?と、その容赦のなさにビックリ(笑)。こういうところから、子どもが数学や理科に興味を持ってくれたらうれしいですよね」

 イラストレーターとして、心がけていることは?

「これまでの実績を見て依頼が来るので、似たような仕事が多くなる。そこで同じようなイラストを描くのは不本意なので、常に“違う形に変えていこう”と考えます。30年もやってると、『あれ、こういうの前も描いたな?』と思うことがあって。だから今のほうがアイディアを決め込むまでに時間がかかるんですよ。年を取れば、仕事は速くなると思ってたのに!(笑)」

 そもそも『空想科学読本』の独特な画風も、「違うことをやろう!」と生み出したものなんだそう。同じことを繰り返さない…。おおらかな雰囲気のなかにも、秘めた信念を感じます!



映画サークルが人生の転機
当時の仲間は30年来の付き合い


 実家の町工場で、従業員が読んでいた大人向けのマンガ雑誌に影響された少年時代。人生の転機は大学の特撮映画サークルで、8mm映画に関わったことでした。

「僕が描いたサークルの看板を、編集プロダクションの人が目に留めて。初めてイラストの仕事を頼まれたんです」

「そこの社長からは、営業の仕方も教わりました。『何か仕事をくれ』ではなく、『自分にはこれができる』と提示しないとダメだと。自分に合わない仕事は結局苦しくなるから、常にやりたいこと、できることから仕事をもらうようにしなさい、と言われました」

 こうして始まったイラストレーター人生。30年たった今も、当時の友人のつながりから依頼されることが多いそうです。練馬アニメーションサイトで始まった「練馬アニメスポット探訪記」の連載も、旧友からの声掛けがきっかけでした。

 さらに練馬のアニメ会社とも、深いご縁をお持ちでした!

「高校は西武線沿いの友人が多くて。よく家に泊まりに行ってた友達のお父さんが、東映動画(東映アニメーションの前身)で劇場アニメ『長靴をはいた猫』を作った矢吹公郎監督だったんです!」

「大人向けマンガを読んで育ったからか、話が合うと親御さん世代によく気に入られました(笑)。矢吹監督からも、『息子抜きで遊びに来いよ』と言ってもらえたり、家族向けの試写会にも呼んでもらったりしました」

 上石神井に移り住んだのも、学生時代の友人のツテでした。

「この界隈で生まれ育った友人たちの紹介で、馴染みの店がたくさんできました。そこのお子さんつながりで、地元の小学生から挨拶されるようにもなって。実家以外で“自分のまち”と思えたのは、上石神井が初めてですね」

 不思議な縁でつながった練馬。「練馬アニメスポット探訪記」の連載、これからも楽しみにしています!

(平成26年7月1日)

自宅の仕事場の風景。
山になった資料は、
他の部屋にもぎっしり!
(イラスト提供:近藤先生)


『空想科学読本』創刊号から
本文イラストをすべて手がける。
トータル1200点以上!
(メディアファクトリー発行)


スカパー!の時代劇チャンネル
の月刊ガイド誌にも! 
(写真提供:近藤先生)


「ちょっとしたcafe PATISSIEReco房」で
カッパのグループ展を
2011年に行いました。
ペーパークラフトの才能も!
(写真提供:近藤先生)


練馬アニメーションサイトが
リニューアルされました。
その中で近藤先生による
「練馬アニメスポット探訪記」
の連載がスタート!


トレードマークは
ハッピ&ハチマキ。
20年もの、オリジナルです! 


「やまぶき&こばん」の
2匹のネコも同居人。
(写真提供:近藤先生)


気負いなく自然体、
いつも楽しそう! 
周りに人が集まってくる
魅力を感じました

プロフィール

近藤ゆたかさん

近藤ゆたかさん

1964年、東京の下町・墨田区で生まれ育つ。実家は造船用の鉄を加工する町工場。兄・妹2人の4兄弟で、「絵さえ描いていれば手のかからない子」だった。『少年マガジン』『漫画アクション』『プレイコミック』など、大人向けのマンガ雑誌に影響を受ける。一方で勉強、特に数学が好きで、早稲田実業学校高等部から早稲田大学理工学部へ進学。マンガ家のちばこなみ(粉味)との結婚生活を西東京市の保谷で始める。2006年、友人の実家(もと下宿屋)があいていたことから、上石神井へ。『空想科学読本』のイラスト、特撮・時代劇などの豊富な知識を活かし、文章やアニメの設定など多方面で活躍している。練馬で好きな店は、数年来の常連である上石神井の「ちょっとしたcafe PATISSIEReco房」。中華料理屋「末宝園」は、家族ぐるみの付き合い。好きな場所は、上智大学神学部のキャンパス。ザビエル祭で初めて入って以来、お気に入りに。

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