特集記事 Reviews
#005 「武蔵野本手打うどん房 エン座」店主
加藤智春さん・結子さん
奥様の結子さんを戦友のようだという加藤さん。二人揃ってのエン座です。
エン座の名前の由来と
ピンクのうどん1本に込めた思い
富士街道沿い、西村バス停のすぐ前にあるエン座。入口の植込みには「フジミ小麦」と「農林61号」の2種の小麦が10cmくらいの大きさに元気良く育っています。全国のうどん好きにも名の通ったエン座、地元の小麦や野菜にとてもこだわりを持っているとのことでお話を伺ってみました。まずはお昼のうどんをいただいて…。
人気メニューという「季節の霙糧もり」を注文。少しして優しそうな奥様がお盆を運んできてくれました。お皿に盛られたうどんはきめが細かくつやつや、そして1本ピンク色の麺が帯のように添えられています。温かい汁の入った椀には野菜や肉がたっぷり。練馬の野菜たちが畑で栽培されてこの器に入るまで、多くの人の手を介していることをちょっと想像してみる。「季節によって入れる野菜が違うから、その分、味の変化も楽しめますよ」奥様が教えてくれました。勢い良くうどんをツルッ、コシのある歯応えと喉越しの良さに参りました~。
厨房から出てきたご主人の加藤さんに、1本だけ入ったピンクの麺のことを尋ねると
「あれはね、赤紫蘇のエキスで色付けをしているんだけど、わざわざエン座に来て食べてくださったお客様への感謝の気持ちなんです」
土日になると遠方から訪れるお客様が多いそう。エン座という名前は、座を丸く囲む「円」と、人と人とのつながりの「縁」を意味しており、加藤さんは縁をとても大切にしていることがお話の端々に伺えます。
うどん嫌いだった加藤さんが
うどん屋さんになった!
加藤さんは生まれも育ちも大泉地区の土地っ子。このあたりは武蔵野台地の一角で、米作りより畑作に適していました。冠婚葬祭にもうどんが打たれるほど、昔から武蔵野うどんが食された地区です。加藤さんも子どもの頃からきっとうどん好きだと思っていたら…
「実はうどんは大嫌いでした。そば好きでウンチクを語ってましたよ(笑)」。
どんなきっかけで現在に至るのか興味津々。
「埼玉県の名栗へ妻と出かけて、おじいさんがやっている店のうどんをたまたま食べたとき、これまで避けていた家族の思い出とか行事とかフラッシュバックのように浮かんだんです。うどんってすごいな、優れた食品はタイムマシンになるのかって」
趣味人で凝り性の加藤さんは手打うどんを習おうと決意。弟子入りするなら名栗のおじいさんしかいないと、断られてもご夫婦で通い詰めたそうです。その後、リストラにあった加藤さんがエン座を開くまでには、店の家賃を半年間無料で貸してくださったかつてのお客様など、人との深いご縁の上に成り立っているから、一切手は抜けないと言い切ります。
そんな話をしながら大きなボールに小麦と水と塩を混ぜ、うどんの生地作りが始まりました。ミキサーなどを取り入れれば量産できますが、加藤さんはハンドメイドにこだわり1日80食限りとしています。
地産地消にこだわり
練馬に麦畑を増やしたい
エン座の定休日には、加藤さんは何をされているのか尋ねると
「地元の農家をまわってお話を聞いたり、麦の栽培をしていただけるようお願いしたりしています。あと、学校などで手打うどん教室やうどん講座をしたり。勉強のため他店のうどんを食べに行くこともありますね」
笑ってしまうほど、すべてがうどん一色。
「小麦は加工食品の王様で、パンにもうどんにもまんじゅうにもなります。麦は土地に対して貢献できることがかなり多いんですよ。栽培していれば春の強風のホコリ除けにもなるし。お米の栽培を教育に取り入れている小学校は多いけど、土地の性質を考えれば麦でもいいのではないかと思います。子どもたちが麦を蒔いて麦踏みをして、収穫した後はうどんやパンの教室、その後はお年寄りが麦わら細工を子どもに教えるなど、世代を超えたコミュニケーションツールとしたり…」
麦の話は尽きません。地産地消、土産土法にこだわる加藤さんは、うどん屋さんの枠を超えた伝道師なのかも!?
加藤さんの好きな場所を尋ねると
「初夏の頃、麦を取り入れる季節を麦秋というんですが、風が吹くとザーッとなびいてまた戻ってくる。いい意味でぞっとするんです。お米は実るほど頭を垂れますが、麦は天に向かってまっすぐ伸びていくでしょ、その姿も大好きなんです」
うどんで繋がるご縁は、これからもさらに広がっていくことは間違いありません。
ピンクのうどん1本に込めた思い
富士街道沿い、西村バス停のすぐ前にあるエン座。入口の植込みには「フジミ小麦」と「農林61号」の2種の小麦が10cmくらいの大きさに元気良く育っています。全国のうどん好きにも名の通ったエン座、地元の小麦や野菜にとてもこだわりを持っているとのことでお話を伺ってみました。まずはお昼のうどんをいただいて…。
人気メニューという「季節の霙糧もり」を注文。少しして優しそうな奥様がお盆を運んできてくれました。お皿に盛られたうどんはきめが細かくつやつや、そして1本ピンク色の麺が帯のように添えられています。温かい汁の入った椀には野菜や肉がたっぷり。練馬の野菜たちが畑で栽培されてこの器に入るまで、多くの人の手を介していることをちょっと想像してみる。「季節によって入れる野菜が違うから、その分、味の変化も楽しめますよ」奥様が教えてくれました。勢い良くうどんをツルッ、コシのある歯応えと喉越しの良さに参りました~。
厨房から出てきたご主人の加藤さんに、1本だけ入ったピンクの麺のことを尋ねると
「あれはね、赤紫蘇のエキスで色付けをしているんだけど、わざわざエン座に来て食べてくださったお客様への感謝の気持ちなんです」
土日になると遠方から訪れるお客様が多いそう。エン座という名前は、座を丸く囲む「円」と、人と人とのつながりの「縁」を意味しており、加藤さんは縁をとても大切にしていることがお話の端々に伺えます。
うどん嫌いだった加藤さんが
うどん屋さんになった!
加藤さんは生まれも育ちも大泉地区の土地っ子。このあたりは武蔵野台地の一角で、米作りより畑作に適していました。冠婚葬祭にもうどんが打たれるほど、昔から武蔵野うどんが食された地区です。加藤さんも子どもの頃からきっとうどん好きだと思っていたら…
「実はうどんは大嫌いでした。そば好きでウンチクを語ってましたよ(笑)」。
どんなきっかけで現在に至るのか興味津々。
「埼玉県の名栗へ妻と出かけて、おじいさんがやっている店のうどんをたまたま食べたとき、これまで避けていた家族の思い出とか行事とかフラッシュバックのように浮かんだんです。うどんってすごいな、優れた食品はタイムマシンになるのかって」
趣味人で凝り性の加藤さんは手打うどんを習おうと決意。弟子入りするなら名栗のおじいさんしかいないと、断られてもご夫婦で通い詰めたそうです。その後、リストラにあった加藤さんがエン座を開くまでには、店の家賃を半年間無料で貸してくださったかつてのお客様など、人との深いご縁の上に成り立っているから、一切手は抜けないと言い切ります。
そんな話をしながら大きなボールに小麦と水と塩を混ぜ、うどんの生地作りが始まりました。ミキサーなどを取り入れれば量産できますが、加藤さんはハンドメイドにこだわり1日80食限りとしています。
地産地消にこだわり
練馬に麦畑を増やしたい
エン座の定休日には、加藤さんは何をされているのか尋ねると
「地元の農家をまわってお話を聞いたり、麦の栽培をしていただけるようお願いしたりしています。あと、学校などで手打うどん教室やうどん講座をしたり。勉強のため他店のうどんを食べに行くこともありますね」
笑ってしまうほど、すべてがうどん一色。
「小麦は加工食品の王様で、パンにもうどんにもまんじゅうにもなります。麦は土地に対して貢献できることがかなり多いんですよ。栽培していれば春の強風のホコリ除けにもなるし。お米の栽培を教育に取り入れている小学校は多いけど、土地の性質を考えれば麦でもいいのではないかと思います。子どもたちが麦を蒔いて麦踏みをして、収穫した後はうどんやパンの教室、その後はお年寄りが麦わら細工を子どもに教えるなど、世代を超えたコミュニケーションツールとしたり…」
麦の話は尽きません。地産地消、土産土法にこだわる加藤さんは、うどん屋さんの枠を超えた伝道師なのかも!?
加藤さんの好きな場所を尋ねると
「初夏の頃、麦を取り入れる季節を麦秋というんですが、風が吹くとザーッとなびいてまた戻ってくる。いい意味でぞっとするんです。お米は実るほど頭を垂れますが、麦は天に向かってまっすぐ伸びていくでしょ、その姿も大好きなんです」
うどんで繋がるご縁は、これからもさらに広がっていくことは間違いありません。
(2007年1月28日更新)
フジミ小麦の種はあるご縁で40年ぶりに練馬の地に帰ってきました。
木の椅子にカラフルな座布団がかわいい。
季節の霙糧もり。
糧(かて)とは、おかずのような意味です。
自家製焼豚がのった焼豚うどん(ラドン)。
毎日こうして麺は作られます。
水分や塩の加減は、天候及び加藤さんの経験値!
麦やうどんを語ると熱くなる加藤さん。
エン座入口